中途採用は、迅速に経験豊富な人材を獲得するための採用手法です。この手法では、履歴書や経歴に基づいて適切な判断を下しやすい利点があります。しかし、単に過去の経験や実績があるだけで、その人材が自社で活躍できることが保証されるわけではありません。中途採用の面接では、「過去の実績や成果を自社でも再現できるのか?」という「再現性」を確認することが非常に重要です。
さらに、中途採用者は以前の経験から独自の価値観や働き方を持っており、入社後に変化しにくい傾向があります。したがって、自社のカルチャーや価値観との適合性を確認するために、中途採用者の柔軟性や適応能力にも注目する必要があります。適切な採用手続きが行われない場合、早期離職や組織の風土への悪影響が生じる可能性もあります。
このように、自社に最適な中途採用者を獲得するためには、面接時の質問やアプローチを適切に設計し、候補者の適合性を評価することが重要です。
この記事では、中途採用の面接における見極めのポイントと効果的な質問テンプレートを紹介します。さまざまな視点からアプローチすることで、優れた中途採用者を採用するための貴重なノウハウを提供します。
目次
- 中途採用の面接で求職者を見極める2つのポイント
スキルフィット
カルチャーフィット - 中途採用の面接において、面接官が聞くべき重要な11つの質問
職務経歴に関する質問
論理的思考能力に関する質問
コミュニケーション能力に関する質問
成長意欲に関する質問
モチベーションに関する質問
ストレスに関する質問
仕事に対する姿勢への質問
キャリアに関する質問
転職理由に関する質問
志望動機に関する質問 - 「採用面接の質問」に関してよくある質問
- まとめ
中途採用の面接で求職者を見極める2つのポイント
中途採用の面接において、スキルと価値観の両面を評価することが肝要です。
○スキルフィット
中途採用の面接において、スキルのフィットを評価するためには、次の点に注目する必要があります。「候補者が自社で活躍できるスキルを有しているか?」や「業務内容と候補者のスキルが相互に適合しているか?」などを把握することが重要です。また、過去の成果に関しては、「どのような環境や役割の下で成果を出したのか?自社での成果再現の可能性はあるか?」といった点を詳しくヒアリングすることが重要です。
履歴書や職務経歴書には、以下のような成果や実績が記載されている場合もあります。
引き継ぎによる成果(前任者の優れた企画など)
市場環境による成果(幸運なタイミングや流行によるもの)
成果を出したプロジェクトでアシスタント的な役割を果たした場合など
また、候補者自身が成果を出した場合でも、「良い顧客に出会った」といった幸運な要素が影響している場合もあります。したがって、面接官は、環境や役割から始まり、プロセスや成果を出すために候補者が実施しているアプローチなどを詳しくヒアリングし、成果の「再現性」を評価することが重要です。
○カルチャーフィット
カルチャーフィットの評価では、企業の文化、社風、および価値観との適合性を確認します。スキルは入社後の教育によっても向上させることができますが、価値観は簡単に変化しません。特に中途採用者は、仕事に対する価値観や働き方が一定程度固まっているため、カルチャーフィットの重要性も高まります。
「能力は高いが、企業の文化に合わない」人材を採用すると、組織全体に悪影響を及ぼす可能性もあります。そのため、価値観に加えて、前職での業務の進め方、裁量権の度合い、チームワークの重視度などもしっかりとヒアリングすることが重要です。
中途採用の面接において、面接官が聞くべき重要な11つの質問
●職務経歴に関する質問
「過去の職務経験において、誇れる成功と失敗の経験について教えてください」
前述の通り、職務経歴書上の成果は、個人の能力だけによるものではありません。したがって、成功体験や失敗体験については、STAR面接などの手法を用いて、具体的なエピソードを掘り下げ、その成果が再現可能かどうかや、行動特性などを評価していきます。
S(当時の状況や立場はどのようなものでしたか?)
T(どのような課題、責任、目標がありましたか?)
A(どのような意思決定や行動をとりましたか?それはなぜですか?)
R(どのような結果を得ましたか?それから何を学びましたか?)
「仕事で成果を上げるために日々取り組んでいる具体的な取り組みを教えてください」
採用時に重要なのは、応募者の職務経験における「自社での再現性」です。そのため、求職者がどのようなプロセスや意思決定によって成果を上げたのかを確認していきます。
●論理的思考能力に関する質問
・「成果を出したプロセスを教えてください」
目の前の課題に対して論理的分析や分析に基づく行動を起こせる人材なら、成果を出したプロセス、再現性につながる理由や要因を挙げられます。質問への答えが明確ではない場合、論理的に考えるスキルが低い可能性が大でしょう。
・「前職で実施していたPDCAサイクルのポイントを教えてください」
仕事で論理的思考能力が問われるポイントの一つはPDCAサイクルです。成果をあげるためのポイントを見極めて、計画→進捗把握→課題への対応ができていたかを確認します。
・「弊社の商品で月○万円の売上を達成するにはどうしますか?」
売上達成を実現するために、現時点での知見や見識をどれだけ活用して物事を考えられるかどうかをチェックする質問です。論理的思考力の高い人の場合、自ら手立てを生み出すために、的確な逆質問をしてくる可能性も高いでしょう。
シミュレーション能力に関する質問
・「営業成績が上がらないときにはどうしますか?」
行きあたりばったりで仕事をするのではなく、結果を出すための手立て(引き出し)をどれぐらい出せるかどうかを確認する質問です。
・「退職願を出しても、企業が認めてくれない場合はどうしますか?」
想定できない事態に直面したとき、対処の仕方や展開の可能性を推測できるかどうかを確認する質問です。
●コミュニケーション能力に関する質問
・「仕事において報連相する際に重要視し、日々実践していることは何ですか?」
他者に配慮し、明確かつわかりやすい報連相ができる能力や、迅速なコミュニケーションが可能かどうか、上司が不在の際に柔軟に対応できるかなどを確認する質問です。
・「初対面の方との会話において大切にしている要素はありますか?」
新たな同僚やお客様と信頼関係を構築する能力を確認する質問です。相手のコミュニケーションスタイルや価値観を理解しようとする姿勢や、自社の社風やカルチャーに適合しているかどうかを見極める重要な質問です。
●成長意欲に関する質問
・「自身の短所について教えていただけますか?」
自身の弱点や短所を受け入れ、それにどのように向き合っているかを確認する質問です。ただし、面接のために用意された回答かもしれませんので、具体的な短所を改善するために何をしているかや、その短所をどのように捉えているかなど、掘り下げた質問を行うことが重要です。
・「自己成長や仕事で成果を上げるために取り組んでいることはありますか?」
日々の中で学びを得たり、成長するための習慣を持っているかを確認する質問です。具体的な方法は問いませんが、「情報を吸収する習慣があるか」「知識を得るだけでなく、それを成果に結び付けるための取り組みをしているか」といった点について探求しましょう。
●モチベーションに関する質問
・「仕事においてモチベーションが高まる状況はどのようなときですか?」
自身の動機やモチベーションを把握し、何が自分を鼓舞するのかを確認する質問です。適性検査の結果とも照らし合わせながら、具体的な現職(前職)での場面や状況について深く探求していきましょう。
・「自身のモチベーションを維持するためにどのような方法を実践していますか?」
この質問には正解はありません。しかしながら、具体的な回答を提示できる人は、セルフマネジメントの能力が高い可能性があります。逆に回答が得られない場合は、自己認識やセルフマネジメントのレベルが低い可能性があることに注意しましょう。
・「自身の高めたい能力は何ですか?その理由は何ですか?」
明確な向上したい能力を抱えている人は、自身の欠点や成果を得るための道筋を把握している可能性が高いです。理由や背景について掘り下げることで、能力向上への本気度も見えてきます。
・「負けず嫌いですか?もしくは具体的なエピソードがあれば教えてください。」
負けず嫌いな人は、自身を奮い立たせることに長けており、個人として高い戦闘力を持つことがあります。ただし、競争心や敵対心が表面化することで、チームの調和を乱す可能性があるため、企業の社風との適合性には注意が必要です。
●ストレスに関する質問
仕事で困難なエピソードを教えてください。それをどのように乗り越えましたか?」
逆境に直面した経験がある人は、自信を持ちながら取り組むことができます。具体的な困難さについては、労働時間や睡眠不足、身体的な症状などを総合的に評価します。乗り越えた方法を尋ねることで、個人の頑張り度合いやストレスへの対処方法などを把握することができます。
・「仕事でストレスを感じる状況はどのようなときですか?」
自己認識のレベルを確認するための質問です。同時に、「どのように対処していますか?」という点も重要です。明確な回答が示される人は、後天的なストレス耐性やレジリエンスといった能力が高い傾向にあります。
「我慢する」「耐える」といった回答をする人は真面目な性格である一方で、心が折れたり爆発したりするリスクもあるため、注意が必要です。
・「日常生活で大切にしている習慣はありますか?」
ストレス耐性やセルフマネジメント力が高い人は、バランスの取れた食事や規則正しい生活を意識しています。また、日常生活を自己管理することが、仕事での目標達成にもつながるとされています。優れた人材は、自身のパフォーマンスを安定させるためのルーティンを持っていることが多いでしょう。
●キャリアに関する質問
・「10年後にはどのような職業を目指していますか?」
将来の職業についての意欲や真剣度が見える質問です。真剣な人材は、10年後の自分のイメージを具体的に描くことができます。また、組織志向、マネジメント志向、スペシャリスト志向、個人志向など、どの方向性に興味を持っているかも分かります。
・「当社でどのようなキャリアを築きたいと考えていますか?」
キャリアに関する認識が見える質問です。回答の中で、ただ成長や学習だけを求めている人には注意が必要です。成果や実績に結びつけて自身のキャリア展望を語ることができる人は好ましいです。
・「あなたの人生において仕事はどのような意味を持っていますか?」
個別の正解は存在しませんが、候補者の価値観や考え方を確認すると同時に、経営者や企業との価値観が一致しているかを確認する質問です。
●転職理由に関する質問
・「なぜ転職を考えたのですか?」
転職が個人の夢や目標と関連しているかどうかを確認する質問です。自身の理想や目標に向かうために転職を考えたか、自己リーダーシップを発揮できているかどうかも確認できます。
・「今回の転職理由を教えてください」
・「現在の職場(前職)で、転職しなかった場合の要件は何ですか?」
通常、転職理由についての回答は事前に準備されていることがあります。したがって、追加の質問を行い、深堀りして本音を探ることが重要です。また、転職理由が自身のキャリア展望と一致しているかどうかも確認のポイントとなります。
・「転職を決意するまでに、どのような行動を取りましたか?」
具体的な行動を踏んで転職を決意したかどうかを確認する質問です。状況を他人や環境のせいにするのではなく、自身でも改善を試みたかどうかを確認します。
●志望動機に関する質問
・「今回の転職で重視している要素は何ですか?」
・「今回の転職で条件として求めている点は何ですか?」
これらの質問は転職の基準や重要な要素を確認するためのものです。前者の質問は主観的で前向きな回答が得られやすいです。後者の質問では待遇や働き方などの条件に関する意向も探ることができます。
・「当社に応募する理由は何ですか?」
自社や業界に対する関心や入社意欲を確認するための質問です。高い関心度がある場合、具体的な理由が回答に含まれることがあります。また、企業のウェブサイトなどを調査しているかどうかも確認できる重要な質問です。
「採用面接の質問」に関してよくある質問
Q.「採用面接で何を聞くの?」
新卒採用やスキル採用など、異なる場合に質問の内容は変わりますが、一般的には以下のような質問を主に行います。
●価値観に関する質問:
「仕事での価値観や倫理観について教えてください」
「あなたにとって、仕事で一番大切な価値は何ですか?」
「どのような価値観を持った企業で働きたいと思いますか?」
●スキルに関する質問:
「自身のスキルセットについて教えてください」
「特に得意とするスキルや経験はありますか?」
「今後身につけたいスキルはありますか?」
●モチベーションに関する質問:
「仕事にモチベーションが湧くときはどのようなときですか?」
「自分のモチベーションを維持するためにどのようなことを実践されていますか?」
「自分のどのような能力を高めたいですか?その理由はなぜですか?」
●経歴に関する質問:
「過去の職務経験で最も成果を上げたエピソードを教えてください」
「過去の失敗経験から得た教訓はありますか?」
「前職での責任ある役割やプロジェクトについて教えてください」
●ストレス耐性に関わる質問:
「仕事でストレスを感じる場面や状況はありますか?どのように対処していますか?」
「困難な状況やプレッシャーがかかったとき、どのように対応しますか?」
「過去に乗り越えた大きな課題や困難な状況を教えてください」
これらの質問を通じて、応募者の価値観、スキルセット、モチベーション、経歴、ストレス耐性などを探り、適切な採用判断を行います。
Q.「採用面接でタブーな質問は?」
採用面接で避けるべきタブーな質問の一般的な例は以下の通りです:
性別、民族、人種、国籍、宗教などの個人の属性や出身に関する質問。
結婚歴やパートナーの情報、妊娠や出産計画などの家族に関する質問。
性的指向や性的関心に関する質問。
年齢や生年月日に関する質問(特定の年齢層を差別する可能性がある)。
病歴や障がいに関する質問(労働能力を差別的に評価する可能性がある)。
財務状況や負債に関する質問(経済的な差別を助長する可能性がある)。
思想や信条、政治的な所属に関する質問(個人の政治的な意見や信念に関与する)。
これらの質問は採用に関する判断には直接的な関連性がなく、差別や偏見を生み出す可能性があります。採用面接では、応募者の能力や経験、適性、モチベーションなどに焦点を当てた質問を行い、適正な採用判断を行うことが重要です。
Q.「採用面接の心得は?」
採用面接を行う際に心得しておくべきポイントは以下の通りです:
「応募者から選ばれている」という心得:
採用面接は一方的に企業が選ぶだけではなく、応募者からも選ばれる存在であることを意識しましょう。適切な候補者を探し、魅力的な環境やキャリアパスを提供することで、優秀な人材を引きつけることができます。
「応募者の志望動機を上げる」という心得:
面接では応募者の志望動機を引き出し、興味やモチベーションを高めることが重要です。企業の魅力やビジョン、成長機会などを的確に伝え、応募者が自社に興味を持ち、自身のキャリアを発展させたいと感じるように導きましょう。
「自社の採用ペルソナ」を認識した上での判断基準:
採用にあたっては、自社の採用ペルソナを明確にし、求める人材像やスキルセットを把握しておくことが重要です。面接ではそれに基づいて応募者を評価し、適切な判断を行うことが求められます。
また、採用面接においては以下のポイントにも留意してください:
まとめ
中途採用の面接では、スキルフィットとカルチャーフィットの両方を見極めることが重要です。以下に具体的なポイントをまとめます。
スキルフィットの評価:
中途採用では、応募者の持つスキルや経験が自社の求める要件に適合しているかを評価する必要があります。具体的なスキルや知識、専門性を問う質問や、実務経験に基づく事例を共有してもらうことで、応募者のスキルフィットを確認しましょう。また、求めるスキルセットと応募者の成長意欲や学習能力の関係性も重要な視点です。
カルチャーフィットの評価:
企業の文化や価値観に適合するかどうかを確認することも重要です。自社のカルチャーやチームの特徴、働き方、価値観に関する質問を通じて、応募者の意識や態度、柔軟性を探りましょう。また、過去の職場での経験やチームワーク、コミュニケーションスタイルなどについても話を聞くことで、応募者のカルチャーフィットを評価できます。
評価基準の設定:
求人要件や職務内容に基づき、面接の評価基準を明確に設定しておくことが重要です。求めるスキルや経験、パーソナリティトレイトなどを明確にし、それをもとに面接での評価を行います。評価基準を設定することで、客観的かつ一貫性のある評価が可能になります。
面接の質問方法:
面接では、事例や具体的な経験に基づいた質問を行い、応募者の反応や思考過程を探ります。また、応募者が過去の経験や成果を具体的に説明する機会を与えることで、能力や実績を客観的に評価できます。さらに、チームや他のメンバーとの相互作用に関する質問やロールプレイを通じて、応募者のコミュニケーション能力や協調性を確認することも重要です。
ビハビア面接の活用:
ビハビア面接法は、過去の行動や経験をもとに、応募者の能力や行動パターンを予測する手法です。具体的な状況、行動、結果について詳しく聞き、応募者がどのように問題を解決し、成果を上げてきたかを把握します。これにより、応募者の実際のパフォーマンスや成果を客観的に評価できます。
フィードバックの提供:
面接終了後、応募者に対して適切なフィードバックを提供することも重要です。フィードバックを通じて、応募者に自社の評価基準や期待値を明確に伝えることができます。また、応募者の成長意欲や改善点についてもアドバイスすることで、双方向のコミュニケーションを促進し、関係性を構築することができます。
総合的な判断:
面接結果を総合的に考慮し、応募者のスキルフィットとカルチャーフィットを判断することが重要です。ただし、一つの面接だけで判断を下すのではなく、複数の選考フェーズや他の評価手法と組み合わせて総合的な判断を行うことが望ましいです。
中途採用の面接では、求職者が自社で活躍できるかどうかを見極めるために、スキルフィットとカルチャーフィットの両方を評価することが重要です。適切な評価基準や質問方法を用いて、応募者の能力、経験、パーソナリティといった要素を総合的に判断し、最適な人材を選抜することが目指すべきです。