歯科衛生士の採用単価は高め?採用平均相場と削減のポイント4つ

2023/08/28

歯科医院や歯科診療所の運営者として、歯科衛生士という専門職の存在は重要であり、その採用は必須です。

しかしながら、歯科衛生士の採用にかかる経費、すなわち採用単価は、歯科医院の数が増え、それに伴う需要が拡大するにつれて、年々上昇し続けており、この採用単価をどう上手に抑え、同時に質の良い歯科衛生士を採用していくかは、経営上の大きな課題となっています。

この記事では、歯科衛生士の採用単価の平均相場について説明しつつ、その採用コストを削減するための具体的なポイントについても詳細に解説します。これにより、人材確保と経費のバランスを上手くとる方法を見つけられることを目指します。

目次

歯科衛生士の採用単価平均相場

歯科衛生士の平均的な採用単価について、雇用形態や地域ごとの相場を考慮して見てみましょう。

社員求人の相場

人材紹介会社を通じて歯科衛生士を採用する際の適正報酬は、一般的に年収の約20%とされています。これは、歯科衛生士の給与が月額24万円から26万円程度と仮定した場合、一人の歯科衛生士を採用するための費用(採用単価)が約70万円~80万円となるということを意味します。

ただし、新たに採用した歯科衛生士に対する教育や研修費用などを考慮に入れると、一人の歯科衛生士を採用するための総費用は100万円近くにも上ることがあります。
さらに、歯科業界全体で歯科衛生士の人材が不足している現状や、より良い労働条件を求めて他の診療所へ転職する可能性を考慮すると、競争力のある条件を提示しなければならない状況が今後予想され。これは、採用単価がさらに上昇する可能性があります。

パート求人の平均相場

厚生労働省が実施した「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、地域ごとの最低賃金はパートタイムの労働者の平均時給に大きな影響を与えています。例えば、最低賃金が1,041円の東京都では平均時給が1,540円であり、一方で最低賃金が889円の北海道では平均時給が1,080円となっています。

パートタイムの労働者を採用する際、企業は求職者一人当たりのコストを抑えつつ、採用情報を多くの人に届けることを重視します。そのため、求人広告の掲載など、広範にわたる求職者に向けた情報発信が主な採用手法となります。

このような状況下では、パートタイム労働者一人当たりの採用コストは、その地域の時給に大きく左右されます。最低賃金が地域ごとの時給を決定する要因であることから、採用コストも同様に地域ごとの最低賃金によって変動することになります。

全職員の採用においても同様、他の企業に引き抜かれるのを防ぐためには、競争力のある条件を提示することが必要です。しかし、時給が採用コストに直接影響を与えることを考慮すると、自社が活動している地域の平均時給を把握することが、採用コストを適切に調整する上で重要なステップとなります。

参考:令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省


歯科衛生士の採用単価が高騰する理由

歯科衛生士という職種の採用にかかる費用は、一般的に人材が不足していることや、職場からの離職が多いことなどにより、年々上昇の一途をたどっています。

以下では、なぜ歯科衛生士の採用単価が高騰するのか、その背景にある採用市場の現状や歯科衛生士として働くまでのハードルの高さについて、詳しく解説していきます。これから歯科衛生士の採用を考えている方々にとって、有益な情報を提供できれば幸いです。

有効求人倍率が高い

全国歯科衛生士教育協議会が公開した「歯科衛生士養成教育に関する現状調査」のデータによれば、2019年度に新たに歯科衛生士としてのキャリアをスタートさせた6,298人に対して、その求人数は約13万件にも上りました。これは、求人倍率が驚異的な20倍に達していることを示しています。
この「求人倍率20倍」という数字は、1人の歯科衛生士に対して20個の求人が存在しているという事実を表しています。
このような歯科衛生士の有効求人倍率が驚異的な高さに達している背後には、歯科医院の数が増加しているという現象が一因として挙げられます。

日本歯科医師会が実施した「歯科医師・歯科医療機関の数」の調査によれば、全国的にみて一般病院の数は1996年の8,421カ所から2016年には7,380カ所へと約1,000カ所も減少しているのに対し、歯科医院の数は1996年の59,357カ所から2016年には68,940カ所へと約10,000カ所近くも増加しています。

このように歯科衛生士のニーズが高まる歯科医院の数が増える一方で、人材供給が追いつかず人手不足の状況が生じているのです。

その結果、求人広告に多額の採用予算を投じたり、人材紹介会社に依頼したりと、他の医院よりも一歩先を行く取り組みが必要になっています。求人倍率20倍という売り手市場の厳しい競争を勝ち抜き、歯科衛生士の採用に成功するためには、これが不可欠と言えるでしょう。

参考:歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告、歯科医師・歯科医療機関の数

高い離職率について

歯科衛生士の離職率が高い理由は、いくつかの要素によって説明できます。

まず、求人倍率が20倍に上る売り手市場の状況があります。これは、新たな職場を求める歯科衛生士にとっては、短期間で転職先が見つかるという利点をもたらします。その結果、彼らは現職に満足していない場合、迷うことなく転職を選択することが可能となります。
次に、歯科衛生士の職場における女性の割合が高いという特性があります。これは、出産や育児、介護といったライフイベントをきっかけに、仕事を一時的に、あるいは永続的に離れるケースが見受けられます。女性が多い職場では、このような事情による離職が多いとされています。

また、歯科衛生士の職業選択肢が拡大していることも離職率の上昇に寄与しています。一般企業の企業内診療所や医療機器メーカー、さらには行政の仕事等、歯科衛生士が活躍できるフィールドは増えています。そのため、彼らはより良い労働環境や待遇を求めて、容易に転職を選ぶことができます。
さらに、新人スタッフが離職する理由としては、「アシスタント業務が多すぎる」「仕事の範囲が不明確」といった職場環境の問題も無視できません。これらの問題は、職場での満足度やモチベーションに直接影響を与え、結果として離職を招く可能性があります。

売り手市場である現状において、歯科衛生士は職場での不満を感じたらすぐに転職できる環境にあります。これが、歯科衛生士の離職率が高い一因となっています。

歯科衛生士になるまでのハードルが高い

人々の口腔衛生を支える歯科衛生士になるためには、想像以上に高い壁が立ちはだかります。まずは「3年以上」の専門学校の教育を受けることが必要です。その間、専門知識だけでなく、実際の臨床現場での経験を得るための「実習」も必要となります。
そして、そのすべてを経た上で、最後の関門である「国家資格試験」に合格しなければならないのです。これらは、人々の健康と生命を守るための重要なステップであり、決して軽く見てはならない事項です。それゆえに、学び、訓練、そして資格取得という一連のプロセスは決して容易ではありません。

この歯科衛生士になるまでのハードルの高さが、歯科衛生士業界における人手不足の一因となっています。専門的なスキルと知識が求められ、それに見合うだけの時間と労力を投資しなければならないからです。しかし、それだけにこそ、この職業の価値と重要性があります。


歯科衛生士の採用費削減のポイント

歯科衛生士の採用において、人材不足が引き起こす高額な採用単価は、多くの歯科診療所で課題となっています。

今回はそんな歯科診療所の皆様に向けて、歯科衛生士の採用単価を削減するための具体的なアプローチをご提案します。採用プロセスの見直しから、職場環境の改善まで、幅広い視点から採用コストを抑えるための戦略をお伝えします。この情報を活用して、質の高い歯科衛生士の採用を、よりコスト効率的に行えるようになることを期待します。

既存スタッフの退職防止のための社内環境整備

医療業界、特に歯科衛生士の採用は難易度が高いのが現状です。そのため、最初から新たな人材を探す事態を避けるためにも、現場で働いているスタッフが退職せず、長期間働き続けられるような職場環境を整えることが重要となります。
スタッフが退職するということは、それだけでなく、採用や研修にかかった費用が無駄になるだけでなく、そのスタッフが培ってきた知識や技術、経験も一緒に失われることになります。それは組織として大きな損失と言えます。

退職を防ぐためには、組織としてスタッフの満足度を高めることが必要です。そのためにも、定期的にスタッフとの意見交換の場を設け、彼らの声を聞くことが必要です。そのフィードバックをもとに職場環境を改善し、働きやすさを追求することで、既存スタッフの退職を防ぐことができるでしょう。

ミスマッチを防ぐ求人票・自院サイトの制作

新しい歯科衛生士を採用したにも関わらず、求人情報と実際の職場環境が一致していないという理由で早期に退職されてしまう事例があります。

このような早期退職が起こると、新たに再採用を行わなければならず、初めて採用した際にかかった費用が無駄になるだけでなく、再採用のための追加の費用が発生します。
このような不適合を防ぐためには、求人票に募集要項や勤務地などの基本情報だけではなく、スタッフが働いている様子や院内の写真など、職場の雰囲気を感じ取れる情報を掲載することをおすすめします。

ただし、求人票の見直しはもちろん大切ですが、それだけでは対策としては不十分かもしれません。求人広告を出すよりも自由な表現が可能で、より多くの自院情報を掲載できる自院サイトの制作を考えてみてはいかがでしょうか。自院サイトに採用ページを設けることで、より詳細な情報を伝えることができ、ミスマッチを防ぐ効果が期待できます。

リファラル採用の導入

リファラル採用とは具体的には何を指すのでしょうか。これは、すでに企業で働いているスタッフが、自分の職場に適任の人材を紹介し、その人材が採用されるという方式を指します。

このリファラル採用を利用することで、求人情報サイトへの広告掲載費用が不要となり、また人材紹介に成功した場合の報酬や、面接・選考に伴う人件費を大幅に削減することが可能となります。
この実例を挙げてみましょう。歯科衛生士の職場において、現状に満足していない人がいたとします。その人が友人である別の歯科衛生士に相談し、友人が働いている歯科医院を紹介され、そこへ入職をするというケースは珍しくありません。

離職することを決断した歯科衛生士は、次回の転職で再び失敗することを恐れています。そのため、友人が満足して働いている歯科医院で働くことを願うことは自然な流れと言えるでしょう。


採用単価を抑えて効率良く歯科衛生士の採用ができる求人サイト

あなたが歯科衛生士を採用する際に、採用単価を下げるためには何をすべきでしょうか? 答えは、採用を行う際に選ぶ求人サイトの選び方にあります。これから、採用単価を抑制しつつ、高品質な歯科衛生士を採用することが可能な求人サイトについてご紹介します。この情報は、人材獲得のコストを効果的に管理したい歯科クリニックオーナーや採用担当者にとって非常に有用なものとなるでしょう。

「歯科衛生士の採用可能な無料求人サイト」

●Indeedについて

Indeedは、日本国内だけでなく世界中でその名を知られている、求人情報に特化した検索エンジンです。
このサイトを利用すると、「職種」や「会社名」などのキーワードを指定し、さらに「勤務地」などの詳細な条件を設定して求人情報を検索することが可能となります。この結果、多種多様な求人情報サイトに散在している情報を、一度にまとめて閲覧することができます。

Indeedが提供するこの便利な機能により、ユーザーは自身に最適な求人情報を効率的に見つけ出し、Indeedを通じて直接その求人情報ページへとアクセスすることができます。これはまさに、求職者にとっては時間と労力を大いに節約することができる利点と言えるでしょう。

●求人ボックスについて

「求人ボックス」とは、「価格.com」や「食べログ」を運営しているカカクコム社が運営する求人情報の検索サービスのことを指します。

このサービスは、Indeedと同じように、各種求人サイトや企業の専用採用サイトに掲載されている人材募集の情報を自動的に収集します。しかし、それだけではありません。店舗や企業が直接投稿する求人情報も含まれており、それらは求人ボックスだけでしか閲覧することができない、独自の求人情報となっています。これにより、より多角的に、そして深く、求人情報を探すことができます。

●Googleしごと検索(Google for Jobs)について

Googleしごと検索は、世界有数の検索エンジンであるGoogleが提供する求人情報検索サービスです。

Googleの検索窓に求人や仕事に関するキーワードを打ち込むだけで、様々な求人情報が即座に表示されます。これはGoogleの広範囲な検索ネットワークと直結しているためで、求職者が自身の求める仕事情報を探す際に、Google検索を利用することで、適切な求人情報に短時間でアクセスできるという利点があります。
ただし、Googleしごと検索を使用するためには、自社のウェブサイトが必要となります。これは、求人情報を掲載するための基盤となるからです。そのため、自社で求人を出す際には、まず自社のウェブサイトを持つことが重要となります。この点を忘れずに、求人情報の掲載を考えていきましょう。

●スタンバイについて

スタンバイという名のサービスは、2015年の登場以来、「求人特化型の検索エンジン」として利用者からの高い評価を受けています。
このスタンバイを活用すれば、希望する職種や希望する勤務地の条件を指定して検索するだけで、ネット上に存在するあらゆる種類の求人情報を一度に照会することができます。これにより、利用者は無数のウェブサイトを巡る手間を省き、効率的に自分に最適な職を探すことが可能になります。

また、スタンバイに求人情報を掲載するという行為は、同時に「Yahoo!しごと検索」にもその情報が反映されるというメリットもあります。これにより、自社の求人情報がYahoo!の検索結果に表示されることになり、求人情報の露出度が一気に増すことで、より多くの求職者に自社の情報を届けることができます。

●ハローワークインターネットサービスについて

ハローワークインターネットサービスとは、我が国政府が運営する専門的な就職支援機関「ハローワーク(公共職業安定所)」のオンライン版を指します。このサービスは、新たなキャリアを探求している若者から、経験豊富なシニア層まで、幅広い年齢層の方々に親しまれています。

その理由の一つとして、ハローワークが全国に広く展開していることが挙げられます。具体的には、全国的に見ても540ヶ所以上の地点に設置されているという途方もない数です。これは遠隔地や地方都市にお住まいの方々にとって非常に便利です。また、従事している企業側から見ても、地方での採用活動を行う際に最も適した採用サービスと言えるでしょう。そのため、地方採用を強化したい企業にとっては、ハローワークインターネットサービスは欠かせない存在となっています。

「歯科衛生士用の求人ウェブサイト」

◉ファーストナビ歯科衛生士について

ファーストナビ歯科衛生士は、歯科衛生士のための転職ウェブサイトとして広く認知されています。その人気の理由は、そのエージェント型のサービスにあります。これは、専門知識と経験豊富なエージェントが個々の転職希望者を支援するという形式です。

2022年の9月現在では、約12,000件もの求人情報を掲載しています。これらの求人は、地元に根ざした小規模な歯科医院から全国的な大手歯科クリニックまで、全国各地の様々な規模の医療機関を網羅しています。

経験豊富で専門的な知識を持つエージェントは、それぞれの志向やキャリアアップを目指す方々に対して、最適な求人情報を提供します。たとえば、スキルアップを望む方には、その機会が多い職場を、評判が良く将来性のある歯科医院を求める方には、そのような医院の求人を紹介します。これにより、希望者一人一人が自身のキャリアを最大限に活かせるような転職を実現できるでしょう。

◉ジョブメドレーについて

ジョブメドレーは、医療、介護、福祉分野に特化した求人情報サイトとして、その規模と質で業界でトップクラスの地位を確立しています。2022年9月の時点で、その掲載件数は14,200件に上り、その数は日々増しています。

このプラットフォームは全国各地の求人情報を提供しているだけでなく、職業紹介事業者の登録も行っており、求職者にとっては求人情報の検索や面接日程の調整など、就職活動を支援する多くの機能を提供しています。
さらに、ジョブメドレーの求人情報には豊富な写真が掲載されており、これによって職場の雰囲気を具体的にイメージすることが可能になります。特に一部の求人では、ストリートビューを利用して施設の内部を360度見渡すことができ、求職者が職場環境をより深く理解するのに役立ちます。

◉デンタルハッピーについて

デンタルハッピーとは、歯科衛生士専門の転職支援サイトで、エージェント型の形式を採用しています。

このサイトの特徴は、全ての求人情報が非公開である点です。しかし、これは決して情報が不十分というわけではありません。実際には、約8000の歯科医院から寄せられる求人情報を元に、個々の希望やニーズに合った職場を紹介してくれます。
さらに、デンタルハッピーが提供する情報の信頼性は高く、それは彼らの取材活動によるものです。医院やクリニックへ直接赴き、院長や現場の歯科衛生士に話を聞くことで、リアルな現場情報を収集しています。その一部は動画として撮影され、応募を考える候補者が就業先の雰囲気を事前に掴むことができるよう配慮されています。

これらの取り組みにより、デンタルハッピーは、歯科衛生士の転職を真剣に考える人にとって有益なサービスを提供しているのです。

◉シカカラDH求人について

シカカラDH求人とは、特定の専門職である歯科衛生士に焦点を当てたエージェントサービスとなっております。このサービスは、求人情報に限らず、各種キャリアサポートも提供しています。
このエージェントは、一般公開されない求人情報を多数手がけている一方で、ウェブサイトを通じて公に募集を行っている求人情報も取り扱っております。2022年9月現在、公開されている求人情報は約5900件にも上ります。

シカカラDH求人のユニークな特徴として、単なる募集要項だけでなく、職場の雰囲気を伝える写真や、実際の残業時間や休日情報などリアルな労働環境を反映した情報も提供しています。さらに、口コミや評判といった情報も掲載されており、求職者がより具体的なイメージを持ちやすくなっています。これらの詳細な情報提供により、求職者は自分に最適な仕事を見つける手助けを受けることができます。

◉デンタルワーカーについて

デンタルワーカーとは、2022年9月の時点でおよそ12,700件もの求人情報を掲載している、歯科衛生士専門の求人ウェブサイトとなります。

デンタルワーカーの特徴の一つに、会員登録を行うと専属のアドバイザーが自身の転職活動を全力で支援してくれる点が挙げられます。そのため、これまで転職経験がない方でも、安心して活動を始められます。専門的な知識を持つアドバイザーの手厚いサポートを受けながら、自身に適した新たな職場を見つけることが可能となります。


まとめ

歯科衛生士の採用に伴う費用は年々増加傾向にあるとされており、そのため企業側にとっては採用費用の圧縮が求められています。

採用サイトの無料利用や、既存の従業員からの紹介など、リファラル採用の活用等により、採用にかかる経費を節約することが可能です。しかし、それだけでなく、退職率の抑制にも力を入れるべきです。既存のスタッフが退職しない環境を整えることで、人員不足のリスクも低減できます。

この記事を参考に、歯科衛生士の採用に取り組んでみてはいかがでしょうか。採用は一見難しそうですが、適切な方法を用いれば、必ず成功へと繋がります。