現代では、共働き家庭が増加しており、それに伴い保育園の需要も増大しています。これは、社会的な問題として注目されています。
しかしながら、一方で保育士を必要とする保育園でも、人材不足に頭を抱えている採用担当者が増えてきているという現状があります。
厚生労働省が発表している「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」
によりますと、2022年10月時点での保育士の有効求人倍率は2.49倍となっています。これは、他職種の平均倍率と比較すると、保育士の採用が一段と困難な状況であることを示しています。
そこで、この記事では、必要なコストを抑えつつ質の高い保育士という人材に出会うための5つの具体的な採用方法を、皆様にご紹介します。これにより、保育士採用の難しさを少しでも解消し、質の高い保育サービスを提供できるようになることを目指しています。
目次
- 保育業界の現在と採用単価の傾向
●保育業界の現状や保育士の採用状況
●保育士採用の単価傾向 - 【各採用手法別】保育士の平均採用単価について
●【人材紹介】での保育士の平均採用単価
●【求人媒体】における保育士の平均採用単価
●【就職/転職フェア】での保育士の平均採用費用 - 保育士採用のための単価を抑えるポイント5選
●保育士専用の求人サイトの活用について
●保育士専門・保育所専用センターに求人に掲載する
●紹介・再雇用制度の導入
●自社の採用サイトを作成・運用について
●保育士専門学校との連携について - まとめ
保育業界の現在と採用単価の傾向
人材を採用する際に必要となる知識の一つとして、対象となる業界の現況や求職者の動向、そして採用にかかるコストの傾向を理解することが挙げられます。特に保育業界では、これらの要素が採用活動の成功を大きく左右します。
今回の記事では、保育業界での人材採用を行う上で理解しておきたい、保育業界の現状、保育士の採用状況、そして保育士の採用単価の傾向について詳しく説明します。これらの情報は、あなたの保育園の採用活動にとって非常に有益なものとなるでしょう。
以下の内容をよく読み、自園の人材採用活動に役立ててください。最適な人材採用のためには、業界の動向をつかんで、自園のニーズに合わせた戦略を立てることが不可欠です。それぞれの要素について、具体的な情報とその活用方法を紹介していきます。
保育業界の現状や保育士の採用状況
保育業界は、共働きの家庭の増加や子育て支援のニーズの高まりに伴い、成長産業として挙げられています。しかし、保育所の運営には厚生労働省が設定した一定の人員配置基準があり、この基準を満たす人材の確保が難しく、新たな保育園の開設が困難なのが現実です。
保育士の求人に対する求職者の数を示す有効求人倍率は、2.48倍という高い数値を示しています。これは、一人の求職者に対して、おおよそ2.5件の仕事の機会があるということを意味します。他の業界と比較しても、保育業界におけるこの倍率は高く、保育園各所が優秀な人材を確保するために工夫と努力を重ねていることが伺えます。
また、待機児童問題の解消へ向けた取り組みとして、内閣府が監督する「認定こども園」の数が増加しています。しかし、これが逆に新たな課題を生んでいます。それは、求職者を確保することが一段と難しくなってしまうという問題です。これからの保育業界の動向と、求職者の確保については、一層の注目が集まることでしょう。
保育士採用の単価傾向
保育士としての資格を持つ人々の数は、年を追うごとに増加しています。しかしながら、その資格を活かして保育の分野で働いている人々の数は、全体の約40%程度にとどまっています。
保育士の資格を手に入れたものの、一般の企業に就職を選ぶ学生や、保育の職場に就いたものの5年以内に退職する「潜在保育士」も存在します。これは少なからず、保育士という仕事が、幼い命を預かるという重大な責任と、長時間かつ肉体的に厳しい労働が伴う一方で、その対価としての待遇が十分でないという現状が背景にあると考えられます。
資格を持つ人々がいても、その中から保育士として働きたいと思う人々を増やすことが難しい状況を踏まえ、国は待機児童の問題解消のための政策として、保育士の待遇改善に取り組んでいます(出典:厚生労働省のホームページ)。
賃金の引き上げや、保育士としての実務経験を持たない、あるいはブランクがある保育士資格保有者を職場に復帰させるための実技研修の提供など、保育業界における人材不足の解消に向けた取り組みが、国や地方自治体、民間企業を問わず行われています。
大都市圏、例えば東京や大阪などでは待機児童の問題が深刻であり、同時に保育士への求人倍率も地方と比較して高い水準になっています。
人材の募集方法は、人材紹介会社を通じたものや求人媒体への掲載など、様々ですが、基本的には保育士の採用にかかる費用、すなわち採用単価は上昇傾向にあると言えます。
【各採用手法別】保育士の平均採用単価について
採用に関する支出が増加している現状から、多様な採用手法を理解し、それぞれに適した採用方法を選択することが非常に重要となります。
採用の手段によっては、かかる費用だけでなく、採用活動に必要な時間や労力も変化します。
自分たちの保育園が求める採用方法を選ぶために、次に進む前に、採用手法別の平均費用を見てみましょう。
【人材紹介】での保育士の平均採用単価
「人材紹介」という手法は、採用する側となる保育園が、自身の希望に適した求職者を見つけてもらう仕組みです。この場合、人材紹介会社が求職者を紹介し、その求職者が採用されると、成功報酬として人材紹介会社に報酬を支払う、いわゆる「成果報酬型」の手法となります。
この「成果報酬型」は、採用に関連する初期費用を抑えられるというメリットがあります。つまり、求職者が採用されるまでの費用が不要であるため、無駄な出費を避けることができます。
保育士の年収について具体的に見てみると、公立の場合は約340万円、私立の場合は約310万円が平均となっています。この年収を基に考えると、人材紹介会社に支払う報酬は、年収の20%から40%、つまり60万円から140万円程度が一般的な相場となります。
人材紹介会社を利用することで、質の高い人材と出会うチャンスが増えるという大きなメリットもあります。日々の業務の中では、保育園の希望に適合するような人材を探すのは難しく、面接を実施するだけでも多大な時間が必要です。しかし、人材紹介会社では求職者を事前に選別してくれるため、保育園にとって最適な人材との面接を行うことができ、時間的なコストを節約することが可能となります。
また、面接日程の調整なども人材紹介会社が行ってくれるので、採用担当者の負担を大きく軽減することができ、より集中して質の高い人材の採用に努めることが可能となります。
【求人媒体】における保育士の平均採用単価
求人媒体とは、求職者に対して仕事の情報を提供するために、インターネットや求人情報誌などに求人広告を掲載する方法を指します。
求人媒体を利用するための費用は主に二つの形態が存在し、それぞれ「成果報酬型」と「掲載報酬型(掲載課金型)」と呼ばれます。
「成果報酬型」はその名の通り、求職者の採用が成功した場合のみ求人媒体への報酬を支払うというシステムです。この方式では、求人情報を掲載する自体のコストが無料となるケースが一般的です。
報酬の金額は、求人媒体によって異なるものの、一般的には人材紹介会社を利用するよりも経済的になることが多いでしょう。
一方、「掲載報酬型」は求人情報を掲載する行為自体に費用が発生します。この費用は、求人情報が掲載される期間やサイト内での表示位置、表示される頻度などによって変動します。
この掲載費用は、媒体によっては1万円から40万円と幅広く、多くの求職者に対してアピールできるのが特徴です。
求人情報誌や新聞への求人情報の掲載も、掲載報酬型の形態を取ることが一般的です。特に新聞への折込求人広告は、特定の地域に対して効率的にアプローチすることが可能です。
求人媒体によっては、企業側からの希望に沿った形で求人情報の原稿を作成してくれるサービスを提供しているところもあります。一方で、自社で求人原稿を作成する必要がある媒体も存在します。
掲載報酬型では、価格を抑えることが可能ですが、一方で応募が一切ない場合でも費用が発生するリスクが伴うことを理解しておくことが重要です。
【就職/転職フェア】での保育士の平均採用費用
就職や転職フェアとは何かと言いますと、これは多種多様な企業が一同に会し、求職者に対して各社の魅力や情報を伝えるという特別なイベントのことを指します。
近年のトレンドとしては、「保育士フェア」のように特定の業種に焦点を当てたフェアが開催されています。このようなフェアでは、保育園の採用担当者が直接現地に赴き、求職者と顔を合わせて詳しい説明や面談を行うことが可能です。これが、最も多くの求職者と直接コミュニケーションを取る機会を得られる方法と言えるでしょう。
ただし、このようなフェアへの出展には、事前の準備や当日の対応にかなりの時間と労力が必要となります。そのため、大規模な採用を計画している園にとっては最適な手段と言えるでしょう。
フェア内でのブースの位置により費用は変動しますが、一般的には出展料として20万円から100万円程度を想定しておくと良いでしょう。この投資を通じて、質の高い人材を確保するための貴重な機会を得られます。
保育士採用のための単価を抑えるポイント5選
待機児童問題が持続的に存在する一方で、保育士から他の職種への流出という厳しい現実もあります。その中で、採用にかかるコストは可能な限り抑制したいところです。
保育士の採用単価を抑えるためには、以下の3つの要素が重要となります。一つ目は、質の高い求職者と出会えること。二つ目は、採用担当者の業務負荷を軽減すること。そして三つ目が、採用にかかる費用を抑えることです。
多くの人材派遣会社や求人媒体がある中で、最も効率的に採用成功につながる方法は何かを探求していきましょう。この過程で、保育士の採用単価を抑制するための具体的なアプローチについても詳しく見ていきます。
保育士専用の求人サイトの活用について
保育士専用の求人サイトを活用することで、保育士としてのキャリアを追求する方々に向けての求人広告を直接届けられるため、採用活動がより効率的に展開できると言えます。
また、保育士専用の求人サイトでは、保育園の雰囲気だけでなく、教育方針や職場環境、担任制度などの詳細情報も掲載可能です。これにより、就職後に生じる可能性のある適応問題を未然に防ぐことができます。
保育士の離職理由の中で最も多いとされる「人間関係」についても、求人サイト上で明確に表現することにより、離職を予防することが可能です。具体的には、保育園の雰囲気や園長の理念などを詳細に載せることで、候補者が事前に理解しやすくなるのです。
保育士専用の求人サイトを使用すれば、保育士特有の問題点や懸念事項を具体的に伝えられるため、理想的な人材と容易に接触することができます。これが、保育士専用の求人サイトが提供する最大の利点と言えるでしょう。
保育士専門・保育所専用センターに求人に掲載する
保育士・保育所専用センターとは、保育の専門性を持つが現場から離れている方々が再度、保育士として活躍できるように支援するための施設です。
保育士が不足していて待機児童が増えている問題を解決するための政策の一端を担う重要な施設であり、各地方自治体によって設けられています。
この保育士・保育所専用センターは、保育士の求人情報を専門に扱い、無料で提供するサービスです。また、一定期間仕事から離れていた保育士の方々が再就職する際には、研修を通じてスキルのブラッシュアップを支援します。そのため、新たな保育士を求める保育所や園にとっては、人材採用の大きな力となります。
しかし、これらのセンターの具体的な内容やサービスは自治体によって異なります。そのため、保育所や園が位置する自治体のウェブサイトを確認し、詳細を問い合わせてみることをお勧めします。
紹介・再雇用制度の導入
保育士の職業は、専門的な知識と技術を必要とするため、専門学校や大学で学ぶ期間が長く、その間に形成される繋がりは非常に強固なものとなります。この深い結びつきを活用するという視点で考えると、「紹介制度」の設置は非常に効果的です。
具体的には、現在スタッフとして働いている保育士から、彼らの学生時代の友人や知人を紹介してもらうというものです。この紹介制度を導入することにより、新規の採用に必要なコストを大幅に削減することが可能になります。
また、過去に一度働いて離職した保育士を再び雇用するという選択肢も考えられます。特に保育士の職場は女性が多く活躍しており、結婚や出産をきっかけに一度退職した方も少なくないでしょう。
そのような離職経験者を再雇用する際には、彼女たちのライフスタイルや希望する条件と、園のニーズや条件を丁寧にすり合わせることが重要です。そうすることで、新規採用時に比べて教育に必要な時間やコストを大幅に削減でき、効率的な人材確保が可能となります。
自社の採用サイトを作成・運用について
「自社採用サイト」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?これは、公式ウェブサイトとは別に、特に保育士の採用に焦点を当てたウェブサイトのことを指します。
保育士という職業を目指す方々は、自分が将来働く場所について具体的なイメージを持ちたいと考えています。例えば、担任制や定員制があるか、教育方針は何か、人間関係はどのように築かれているか等、調査したいポイントが数多く存在します。
こうした情報を詳細に、そして自由に表現できる自社採用サイトは、求職者にとって非常に有益な情報源となります。そしてそれが、企業にとっても優秀な人材を引き寄せるための強力なツールとなるのです。自社採用サイトの適切な作成と運用は、採用活動において重要な戦略と言えるでしょう。
保育士専門学校との連携について
新たに保育士を採用する際、保育士の専門学校や大学との協力関係を考えることは有益な手段です。
なぜなら、専門学校や大学は、学生たちが卒業後すぐに就職できるようにするために、学校内での求人掲示を無料で許可することが多いからです。このような機会を見逃さないように、定期的にチェックを忘れないでください。
また、専門学校や大学には、学生の就職活動を支援するための部署、たとえば「就職課」のような部署が設けられています。このような部署の担当者と連携し、学生たちを直接紹介してもらえる関係を構築することは、新卒採用のコストを大幅に削減することに繋がります。
つまり、保育士専門学校や大学と連携することで、求人広告の掲示から新卒採用まで、全体のコストを抑えつつ、適切な人材を確保することが可能になるのです。