近年、人材が不足している現代社会では、採用戦略が組織の成長と存続において重大な役割を持っています。採用戦略とは、具体的には、会社の事業計画を達成するために必要な人材を確保し、そのための計画的な採用活動を行うことを意味します。
採用戦略を策定する際には、以下のポイントが重要となります。
「自社の特性と強みを理解し、それをPRする」「求職者のニーズと期待を深く理解する」「具体的かつ効果的な採用計画の策定」です。
本記事では、採用戦略の全体像とそのメリット、さらにはフレームワークを活用した採用戦略の策定プロセス、そして採用戦略を成功させるための重要なポイントと注意点について、詳細に分析しています。これらの知識を身につけることで、読者の皆様が採用戦略の立案・実行をより効果的に行うことができるようになることを目指しています。
目次
- 採用戦略について
採用戦略とは何か?
採用戦略を求める現状の背景 - 採用戦略の3つのメリット
1. 良質な母集団の形成
2. 採用ミスマッチの防止
3. 組織力をさらに強化できる - 採用戦略を立てる時の重要な2つのポイント
1. 自社の魅力とアピールポイントを把握する
① 自社について理解する
② 自社が求めている人物像の明確化
③ ペルソナの作成ポイント
2. 競合他社への理解
① 求職者への理解
② 新卒採用の場合
③ 中途採用の場合
④ 求職者分析のポイント - 採用戦略の立て方とポイント
●採用戦略とチーム編成について
●ペルソナ作成
●フレームワークを用いた環境分析法(3C分析とSWOT分析)
●3C分析について
●SWOT分析について
●採用戦略設計とキャンディデイト・ジャーニーマップ作成
●候補者体験の構築 - 採用戦略作成の5つのポイントと注意点
1. 人事担当者のリテラシーを向上させる
2. 人事戦略と採用戦略の一貫性
3. 人事担当者のリソースの確保
4. 採用戦略の社内浸透
5. PDCAサイクルの運用 - まとめ
採用戦略について
現在の社会は少子高齢化が進行しており、その結果として、企業が直面している採用市場は厳しい状況となっています。このような厳しい状況で競争相手に打ち勝ち、優秀な人材を確保するためには、細部にわたる採用戦略の策定が非常に重要となります。
採用戦略とは、具体的には企業が求める人材像の設定、求人広告の作成、採用選考の進め方、内定者のフォローなど、採用に関わる全ての工程を戦略的に計画し、実行することを指します。これは単に人手を確保するだけではなく、会社の成長や変革を支えるために必要な人材を見つけ出し、獲得するための重要なプロセスです。
また、採用戦略が求められる背景として、他には技術進歩や産業構造の変化、労働者の価値観の多様化などもあります。これらの変化を読み解き、必要な人材を確保するためには、企業ごとに一人一人に対する深い理解と柔軟な対応力が求められます。そのためには、採用戦略が非常に重要となるのです。
このように、採用戦略は企業が競争力を保つための必須要素であり、その策定と実行は経営陣の重要な責務となっています。これからも少子高齢化社会が進行する中で、企業はより洗練された採用戦略を持つことが求められるでしょう。
採用戦略とは何か?
採用戦略とは、簡単に言えば、会社の長期的なビジョンや目標に基づいて、求める人材の特性を明確に定義し、その人材を効率的に獲得するための戦術を練り上げることを指します。
採用戦略の策定は、組織が必要とする人材を具体的に理解し、その人材をどのような手段や方針で獲得するか、どの部分を改良すべきかといった問いを明確に定めるのに役立ちます。ただ単に求人広告を掲載したり、ダイレクトリクルーティングを行ったりするだけでは、採用の課題を解決するのは難しいだろうというのが一般的な考え方です。
採用戦略をしっかりと策定することで、組織全体で採用の課題を共有し、一貫性のある方針のもとで、戦略的かつ効果的な採用活動を展開することができます。このような組織的なアプローチは、最終的には優秀な人材の確保という目標達成に寄与するのです。
採用戦略を求める現状の背景
かつて、企業による人材の採用は主に求人広告や求人ウェブサイトを通じて行われていました。しかし、近年では厳しい人材不足が進行しており、同時に求職者のニーズも多様化しています。これに伴い、採用市場の競争は一段と激化しています。
これまでのような受け身の採用手法、つまり企業が広告を出して待つというスタイルではなく、より積極的な採用手法が注目されています。その代表的なものとして、ダイレクトマーケティング、オウンドメディアを活用した情報発信、または既存の従業員が新たな人材を紹介するリファラル採用などが挙げられます。
しかし、これらの積極的な手法を用いる際には、ただ闇雲に行うのではなく、計画的に行う必要があります。それは、企業が必要とする人材を効率的かつ効果的に採用するためです。こうした背景から、組織の採用戦略が求められているのです。この採用戦略とは、採用の目的を明確にし、その目的を達成するための具体的な手段や方法を計画することを指します。
採用戦略の3つのメリット
企業が成長し続けるためには、優秀な人材を引き寄せ、そして定着させることが不可欠です。そのために重要となるのが、採用戦略の策定です。採用戦略とは、自社が必要とする人材を効率的かつ効果的に獲得するための戦略のことを指します。しかし、この採用戦略がなぜ重要なのか、その具体的なメリットについては意外と理解が浅いかもしれません。そこで、今回は採用戦略を立てることによる3つの主なメリットについて詳しく解説します。
1.良質な母集団の形成
一つ目は、良質な人材プールを形成できるところです。採用戦略を立てずに、ただ求人広告を出すだけでは、質の高い人材プールを形成することが難しいでしょう。これに対して、事前に採用戦略を練り、企業の必要とする人材像を明確にし、その人材に対して効果的にアプローチすれば、狙い通りの高品質な人材プールの形成が可能となります。これにより、適切な人材を採用する確率が高まり、企業の成長に寄与します。
2.採用ミスマッチの防止
人材の採用においては、企業の成長と持続的な成功を確保するために、正確な人材選択が重要です。ここで、"採用ミスマッチ"という概念が浮かび上がります。これは、企業が採用した人材が実際の業務や企業文化に合わないという事態を指します。しかし、採用ミスマッチは適切な採用戦略を持つことで防ぐことができます。
その一つが、求職者に対する明確な「ペルソナ設定」です。これは、企業が求める理想的な候補者の特性やスキルを具体的に描き出したもので、これを基に採用活動を進めることで、一貫性のある方針を持つことができます。また、このペルソナ設定を通じて、採用広報や求職者とのコミュニケーションも円滑に進められます。
その結果、企業の価値観やビジョンに一致する人材を見つけ出しやすくなり、採用ミスマッチを防ぐことができます。企業の長期的な成長と安定を図るためにも、採用ミスマッチを防止する採用戦略の重要性を理解し適切に実行することは重要です。
3.組織力をさらに強化できる
三つ目の要素として、組織力の強化があげられます。人材を採用する上での戦略を考えるときには、全社の事業戦略に基づいて、それを実現するための一部分として採用戦略を設計することが重要です。例えば、新たなビジネスを推進する目的がある場合、その達成に向けて「チャレンジ精神が旺盛で、自走できる人材」を採用するという目標を設定することが考えられます。このようなアプローチは、全体の事業戦略と人事戦略が連携し、互いに補完する形で作用します。
このように、会社の事業戦略を達成するための適切な人材を採用することで、組織全体の力を強化することができます。これは、組織が自己の目標を達成し、持続的な成長をするためには欠かせない要素です。人材採用の戦略は、単に新たな人材を迎え入れるだけでなく、組織全体のパフォーマンスを高めるための重要な手段となるのです。
採用戦略を立てる時の重要な2つのポイント
これまで企業において優秀な人材を採用するための採用戦略の重要性についてお話ししてきました。ここではその採用戦略を具体的にどのように立てるべきか、そのために重要視すべき2つのポイントについて詳しく説明します。
1. 自社の魅力とアピールポイントを把握する
成功する採用活動の秘訣は、自社の魅力を具体的に理解し、それを戦略的に活用することにあります。この過程は、自社理解、求める人材像の明確化、そして競合他社の理解の三つのステップが欠かせまん。
①自社について理解する
まずは自社の企業理念や経営理念の再確認が、第一歩となります。これは、自社が何を目指し、何のために存在するのかを深く理解するための作業です。企業の理念が社員一人ひとりに深く浸透していると、それは一体感を醸成し、事業活動を活性化させる力となります。この理念に共鳴できる人材を採用するためには、採用担当者自身が理念を深く理解し、それを伝える能力が求められます。
そして大切なのが、具体的な業務内容の理解です。求職者は、「自分が具体的に何を任されるのか」について非常に関心を持っています。そのため、求人情報を提供する企業側としては、業務内容、必要なスキル、経験などを明確にすることが重要です。これについては、各部署の責任者と連携し、求職者が自社で働く様子を具体的に想像できる情報を提供するべきです。これらの準備が整った時、採用担当者は初めて求職者に自信を持って自社を紹介することができます。
②自社が求めている人物像の明確化
自社の特性とニーズを深く理解した上で、"ペルソナ"という考え方を活用しましょう。ペルソナとは、自社が採用したいと考えている候補者の具体的なプロフィールを詳細に設定したものを意味します。その内容は、例えば年齢や性別、地域、生活スタイルや行動パターンなど、多岐にわたります。
ペルソナの設定は、自社が求める理想的な人材像を具体化し、全社員が同じ理解を持つことを可能とします。これにより、採用計画の策定や面接の進行など、採用活動全体に一貫性を持たせることが可能となります。さらに、自社の事業計画を実現するうえで必要な人材をより正確に見極め、適切に採用するための基準を設けることができます。
ペルソナ設定の活用は、人材採用の成功に向けた重要なステップと言えるでしょう。自社の求める人材像を明確にすることで、適材適所の採用が実現し、組織全体の効率と生産性を向上させることに寄与します。
③ペルソナの作成ポイント
ペルソナの作り方には、特定の視点から見たときに必要とされる人材だけを考慮するのではなく、企業が未来に向けてどのような人材が必要となるか、という視点も重要となります。つまり、「企業の理念を共有し、共に成長してくれる人材」を具体的にイメージすることが求められます。
具体的なペルソナの作成にあたっては、企業内にいる、企業の理想とする人物像に近い社員をいくつか選び出し、その人たちが共有している行動特性を分析することが有効です。この行動特性分析においては、スキルや能力、個人の特性、性格、労働条件など、さまざまな観点から分析を進めると良いでしょう。
ただし、すべての要素を備えた理想的な人材は容易に見つかるものではありません。そのため、最低限必要とする要素は何か、これを明確にしておくことが重要です。
ペルソナの設計に役立つワークシートが必要な方は、「ペルソナ設計シート」のページからダウンロードして活用してみてください。人材ビジネスにおけるペルソナ作成のポイントを理解し、具体的な行動に移していきましょう。
2. 競合他社への理解
採用戦略を練る際には、自社以外の競合他社の理解が欠かせません。他社との比較から、新卒者や転職希望者の視点で見た場合の自社の立場を把握することが可能となり、これは非常に有用な情報となります。
競合他社とは、同じ業界の企業だけを指すわけではありません。自社が採用を目指す人材と他企業が重なる場合、その他企業も競合他社となりえます。既存の従業員が就職活動や転職活動を行っていた際に、希望していた企業の名前を聞くことで、仮想的な求職者の視点から情報収集することもできます。競合他社が明確になったら、それぞれの企業と自社との違いを整理し、差別化するポイントを見つけましょう。
以下の要素に着目して比較を行ってみてください。
・企業理念
・企業文化
・規模
・事業内容
・ターゲットとなる顧客層
・福利厚生や就業条件
・経営陣や従業員
整理した差別化ポイントの中から、特に求職者が気になる可能性のある要素、例えば福利厚生や事業内容などを選び出してください。
福利厚生については、他社と比較して自社が優れている点を強調し、訴求します。また、他社に比べて見劣りする部分がある場合は、可能な範囲で福利厚生を見直し、改善することを検討しましょう。事業内容については、自社の強みや競合他社に対する競争力をアピールします。また、将来的な成長戦略など、自社がどのように進化し続けるかを示すことも、求職者にとっては重要な情報となります。
①求職者への理解
採用活動の中で次に重要となる要素は、"求職者の理解"です。企業の採用戦略を成功させるためには、求職者の行動や動向に対する深い理解が必須となります。これらの情報を手に入れることで、より効率的な採用活動を展開することが可能となるのです。
求職者は一人ひとりが異なる特性を持っていますが、特に注目すべきは「新卒」と「中途」の間の違いです。新卒求職者はキャリアを始める場所を探しており、成長の機会や教育の質に重きを置く傾向があります。一方、中途求職者はより具体的なスキルを活かすことができる場所や、キャリアアップのチャンスを求めています。
これらの違いを理解し、それぞれの求職者に対して適切な採用戦略を展開することは、企業の人材確保における重要なステップとなります。それぞれの特徴をしっかりと把握し、企業のニーズとマッチする最適な人材を見つけ出すことが、成功のカギとなります。
②新卒採用の場合
新たな研究結果が、新卒採用の現状とこれからの動向を浮き彫りにしています。就職みらい研究所による2024年卒業予定の新卒生を対象とした調査によれば、2023年2月1日時点での内定獲得率は19.9%に達しています。これは前年同時期と比較して6.4ポイントもの大幅な上昇を見せています。
地域別の内定獲得率を見てみると、「関東地区」が26.7%と最も高く、「中部地区」が次いで22.5%、「近畿地区」が16.7%と続き、その他の地域では7.6%となっています。これらの数字からは、特に関東地区や中部地区における内定獲得の早期化が顕著に見て取れます。
内定を得ることができた業種を調査すると、「情報通信業」が最も多く、その後に「サービス業」、「小売業」が続く結果となっています。
2024年卒業予定の学生に対しては、採用直結型のインターンシップが提供されています。これは、早期選考を進めている学生が参加していると考えられ、その結果として内定獲得率の上昇に寄与している可能性があります。特に大手企業の場合、政府が推奨する採用直結型インターンシップを活用することで、早期選考の流れを加速させると予想されています。
このような新卒採用の早期化の動きを理解し、その情報を元に自社の採用計画を立てることが求められます。さらには、学生がどのように就職活動に取り組んでいるかを参考にし、自社の採用活動を適切に見直し、最適化することも重要と言えます。
③中途採用の場合
このセクションでは、中途採用の際に考慮すべき求職者の動向を詳しく解説します。
【年間を通じた求職者の増減傾向とその理由】
年間を通じて、求職者の数には特定のパターンが見られます。新年度の始まりとなる1月から3月、そして上半期と下半期の間を繋ぐ9月から11月の間は、求職者が増加する傾向があります。これは新たなスタートを切るための動きや、年度の変わり目に合わせた職場環境の変化を求める人々が多いためです。一方、ボーナスが支給される期間である7月から8月、そして12月は、求職者の数が減少します。
求職者が増えるこれらの時期に中途採用を行うと、自社が必要としている人材を見つけるチャンスが高まります。しかし、求職者が減少する時期に採用を行うと、その可能性は下がりますが、同時に他の競合企業との競争が少なくなるという利点もあります。
求職者の増減傾向について詳しく知りたい方は、「中途採用に適した時期は何月? 繁忙期・閑散期のポイントも」の記事をご覧ください。
【転職者が優先する要素:労働条件と仕事内容】
厚生労働省が発表した「平成 27 年転職者実態調査の概況」によれば、自身の意志で退職した転職者が最も多く挙げた離職理由は以下の通りです。
「労働条件(賃金以外)が満足できなかった」(27.3%)
「仕事内容が期待通りでなかった」(26.7 %)
「給与が低かった」(25.1%)
これらの結果から明らかなように、転職者が新たな職場選びにおいて重視するのは、労働条件、仕事内容、そして賃金です。これらの要素において他社より優れたポイントを持っている場合、それらを強調し、具体的に説明することで、転職者に対する魅力を高めることができます。
④求職者分析のポイント
新卒採用と中途採用の各々が持つ独自の特徴について解説してきましたが、ここで一歩進んで、求職者が自社をどのように認識し、どのような立場から自社を見ているのかを深掘りすることで、求職者の立場に立ったより効果的な採用活動を行うことが可能となります。そのためには、求職者の視点を分析するときに、「カスタマージャーニー」の手法を活用することが非常に有効です。
【カスタマージャーニー(キャンディデイト・ジャーニー)】とは何かというと、これはマーケティングの分野で広く使われている考え方で、顧客が商品を購入するまでの過程、つまりどのような行動をとり、どのような思考を経て、どのような感情を持ちながら最終的に購買に至ったのかを理解するための手法です。これを利用することで、時間の流れに沿って顧客の行動・思考・感情を詳細につかむことができ、それによって顧客の視点で商品やサービスの改善策を考えることが可能となります。
このカスタマージャーニーの考え方を採用活動に応用するときには、「顧客」を「求職者」に置き換えて考えます。その結果、求職者が求人に応募するまでの過程、つまりどのような行動をとり、どのような思考を経て、どのような感情を持ちながら最終的に応募に至ったのかを理解することができます。
採用戦略の立て方とポイント
ここからは、具体的な採用戦略の立案方法とポイントを解説します。
採用戦略とチーム編成について
企業の採用活動は、一見すると人事部門の仕事のように思えるかもしれませんが、その実、広範な領域で多くの部署が関わっています。具体的には、広報部門が企業の魅力を伝え、生産や開発、営業部門が面接に参加し、候補者の技術や経験を評価します。これほど多くの部署が関与すると、各部署の意見や方針がバラバラになり、結果として会社全体としての採用活動が一貫性を欠くことがあります。
そのため、これら多岐にわたる採用関係部門が一丸となって、企業の採用戦略を遂行するためには、効果的なチーム編成が必要不可欠となります。組織全体の視点から採用戦略を考え、一つの目標に向かって各部署が連携して動くことで、採用活動はより一貫性を持ち、結果的にはより良い人材を採用することが可能になります。
そして、より洗練された採用戦略を立案したいと考えている企業にとって、採用コンサルティングの利用は大いに役立つでしょう。専門家のアドバイスを得ることで、新たな視点を得たり、未発見だった問題点を見つけ出すことができます。これにより、企業は自身の採用活動をより効果的に、そして効率的に行うことが可能となります。
ペルソナ作成
あなたのビジネスに最適な人材像を明瞭に描くためには、「ペルソナ」の作成が不可欠です。これは前述の「自社が求める人物像を明確化する」の節で触れたような、特定の人物像を具体的に描き出すための手法です。ここでイメージする人物像には、年齢、性別、地域、ライフスタイル、行動習慣といった細かな要素が含まれます。
ペルソナは、企業が理想とする人材像を具現化するための模範となります。そのため、自社の中で高いパフォーマンスを上げている人物の特徴を整理したり、各部署から重要な情報を収集したりすることで、ペルソナ設定に必要なデータを整理することが可能となります。
具体的なペルソナ設計を進める際には、「ペルソナ設計シート」のようなツールを活用することをお勧めします。このようなツールを使うことで、効率的にペルソナを設計し、企業が求める理想的な人材像を明確にすることが可能となります。これにより、的確な人材採用や育成が可能となり、ビジネスの成長につながることでしょう。
フレームワークを用いた環境分析法(3C分析とSWOT分析)
企業の魅力を整理し、具体的に伝えるためにはマーケティングの領域で利用されているフレームワークの活用が非常に効果的です。特に、採用の戦略を考える時には、自社と競合他社の位置づけを理解し、採用市場の流れを把握することが求められます。こうした状況分析に使えるツールとして、「3C分析」や「SWOT分析」がよく用いられます。
「3C分析」は、Company(自社)、Competitor(競合他社)、Customer(顧客)の三つの視点から分析を行う手法です。これにより、自社の強みや競合他社との差別化ポイント、顧客のニーズなどを整理し、戦略立案に役立てることができます。
一方、'SWOT分析'は、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の四つの視点から事業環境を分析する手法です。これにより、自社の内部要因である強みと弱み、外部要因である機会と脅威を明確にし、自社のポジショニングや戦略方向性を見直すことが可能となります。
これらのフレームワークを用いて自社の状況を分析することで、採用戦略をより効果的に立案し、企業の魅力を最大限に発揮することが可能となります。
3C分析について
3C分析という言葉に見慣れない方も多いかもしれませんが、これはビジネスの世界では非常に有用な分析手法です。「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合他社)」「Company(自社)」の3つの項目を指し、それぞれから視点を変えて事象を考察する方法を指します。
この3C分析を適用することで、採用市場における自社の位置付けや課題がはっきりと見えてきます。まず「Customer」、つまりこの場合では求職者のニーズを正確に把握することが重要です。何が求められているのか、どのような点を重視して企業を選ぶのかを理解することで、的確なアプローチが可能となります。
次に「Competitor」、競合他社の分析です。他社がどのような採用戦略を取っているのか、またその結果どのような求人応募者を得ているのかを調べることで、自社がどの部分で差別化を図れるかが見えてきます。
最後に「Company」、自社の分析です。自社の強みや弱み、そしてどのような求職者が自社に適しているのかを明らかにし、戦略を見直すことが重要です。
このように3C分析を採用戦略に活用することで、市場の動向を把握し、競争力を持つ人材を引き寄せることが可能となります。特に「Customer」の部分を「求職者」、つまり我々が欲しいと思う人物に置き換えて考えることで、より具体的な採用戦略を考えることができます。
SWOT分析について
SWOT分析は、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの要素を基に、企業自身の内部環境と、それを取り巻く外部環境を徹底的に調査・考察するツールのことを指します。これにより、企業の強みや機会を最大限に活用し、一方で弱みや脅威を如何に改善または緩和するかという戦略を練ることが可能となります。
この分析手法を、求職者をターゲットとした人材ビジネスに適用することで、自社のどの部分を強調し、アピールするべきかの方向性を見つけ出すことができます。自社の持つ独自性や魅力を如何に求職者に伝えるか、という観点で非常に有用な手法となります。
また、基本的な戦略としては、「強み」を「機会」に活かすことを重視します。つまり、自社が持つ強みを最大限に活用し、それを新しいビジネスチャンスにつなげていくという考え方です。さらに、競合する他社と比べて自社だけが持つ特性や利点を明確にすることも、SWOT分析を行う上で非常に重要なポイントとなります。
採用戦略設計とキャンディデイト・ジャーニーマップ作成
採用戦略を策定する際には、3C分析やSWOT分析を用いることで、より具体的で効果的な戦略が生まれます。これらの分析は、自社の強み、弱み、機会、脅威を明確にし、採用市場や競争環境を考慮に入れた戦略設計に役立ちます。そして、その戦略に基づいて、企業が採用したいと考える理想的な候補者、すなわち「ペルソナ」に対して最も効果的となる採用施策を検討します。
ここで推奨するのが、「キャンディデイト・ジャーニーマップ」の作成です。このマップは、自社に対する候補者の認知から、最終的に入社を決定するまでの一連の行動や思考、感情を時系列で整理することができるツールです。これにより、候補者が採用過程でどのような経験をするのか、どのような感情を抱くのかを明確にすることが可能となり、それに基づいたより精緻な採用戦略を策定することができます。
よって、採用戦略の設計には、自社の状況分析と理想的な候補者像の定義から始め、それを基にした施策の検討とキャンディデイト・ジャーニーマップ作成を行うことが重要です。これらを組み合わせることで、企業は採用活動をより効果的に、そして候補者にとっても魅力的なものにすることができるでしょう。
候補者体験の構築
候補者体験とは、求職者が企業と初めて接触する瞬間から入社するまでの一連の経験のことを指します。これを設計することは、採用成功のための大切な施策となります。
まず初めに、""キャンディデイト・ジャーニーマップ""と呼ばれる、求職者の体験を段階別にマッピングしたものを作成します。このマップは、求職者が企業を初めて知る瞬間から入社決定までの過程を明確にし、それぞれの段階で求職者がどのような心理状態にあるかを理解するためのツールとなります。
このジャーニーマップを基に、「認知→興味・関心→共感・理解→比較・不安解消→決意」という各段階での候補者体験を設計します。各段階で何を感じ、何を求めているのかを理解し、そのニーズに応えるような体験を提供することが求められます。
全体を通して一貫した方針に基づいて設計し、企業側の障害となる要素(ボトルネック)を特定します。そして、そのボトルネックを解消し、候補者体験を向上させるための具体的な策を練ることが重要です。これにより、より多くの求職者を引きつけ、企業への入社を決意させることができるようになります。
採用戦略作成の5つのポイントと注意点
これまで、新たな人材を採用する際の戦略の立て方についてお話してきましたが、その策定にあたって重要なポイントや留意すべき事項を詳細に解説します。採用戦略は、企業が持続的な成長を遂げるために絶対に欠かせないものであり、その策定は企業の未来を左右します。今回は、その策定における重要な5つのポイントと注意点について、深堀りしてご紹介します。
人事担当者のリテラシーを向上させる
採用戦略の策定は企業にとって重要な課題の一つですが、その採用戦略を具現化し、最前線で採用活動を行うのが人事担当者です。しかし、この人事担当者のスキル、すなわちリテラシーが不十分な場合、どれだけ完璧な戦略を練っていても、求める成果を得ることは難しいと言えます。
採用面接の実施などの具体的な業務だけでなく、自社の魅力を最大限に引き立てるプレゼンテーションの技術、コミュニケーション力など、人事担当者に必要なリテラシーは多岐にわたります。これらのスキルを磨くことで、人事担当者は自社の価値をより効果的に伝え、優秀な人材を確保することが可能となります。
特に面接官の役割は重要で、彼らは言わば「会社の顔」とも言えます。そのため、人事担当者だけでなく、他部門から面接官として協力してもらう際の育成も、人事のリテラシーを上げるための必要な取り組みの一つと言えるでしょう。このような努力を通じて、人事担当者のリテラシーを上げることは、企業全体の採用力を向上させ、結果的には企業の成長に寄与するのです。
人事戦略と採用戦略の一貫性
人事戦略は、会社の経営戦略に深く根ざした、非常に重要な事業戦略の一部です。会社の事業戦略は、経営戦略を土台として、財務や人事、開発や生産などの各分野の事業戦略が組み合わさって成り立っています。その中でも、人事戦略は経営戦略を実現するための人材戦略であり、会社の人事戦略に基づいて、採用戦略を策定することが求められます。
具体的には、新規事業を加速させることを目指す場合、人事戦略では新規事業を担当する組織やプロジェクトの立ち上げが必要となります。そして、採用戦略では、その新規事業の組織を運営するために必要な人材の採用や育成が求められます。このように、人事戦略と採用戦略は密接に連携し、一貫性を持つことが大切です。
そのため、人事戦略と採用戦略が一貫性を持つように計画するときは、会社の経営戦略の方向性を理解し、それに基づいて人事戦略を策定し、その人事戦略に基づいて採用戦略を立案するという一連の流れを意識することが重要になります。これにより、会社全体の戦略が一貫したものになり、経営戦略の達成に寄与する人材を確保することが可能となります。
人事担当者のリソースの確保
採用戦略を成功させるためには、人事担当者のリソースを十分に確保することが絶対的に重要となります。採用予定の人数や採用市場の動きにより、通常以上の人事リソースが必要となる状況も十分考えられます。
特に、人材の供給が追いつかない深刻な人材不足の状況では、多様な手段を活用する必要があるかもしれません。人事担当者のリソースが十分に確保できない場合でも、求職者とのコミュニケーションやスカウト活動、求人情報サイトの管理などを、第三者の専門企業へ委託するアウトソーシングの活用が効果的となるでしょう。このような手法を用いることで、人事担当者のリソース不足を補いながら、効率的な採用活動を続けることが可能となります。
採用戦略の社内浸透
人材獲得という大きなテーマに対して、企業全体として統一した策を立てることは至極重要です。採用活動というのは、広報の段階から面接の最終段階に至るまで、さまざまな部署の協力が必須となります。この時、採用戦略が企業全体に共有されていると、各部署が円滑に連携し、タスクを進めることができます。
例えば、広報部署が採用戦略を理解していれば、企業の求める人材像を正確に伝えるプロモーションが可能となります。また、人事部門も同様に戦略を把握していれば、面接で求めるべきスキルや能力を的確に見極めることができます。
さらに、採用戦略が企業全体に浸透していると、求職者に対するコミュニケーションも一貫性を持つことができます。これは、企業の価値観や思想を伝え、求職者が納得して入社を決めるためにも重要な要素です。したがって、採用戦略を社内全体に浸透させることは、成功的な採用活動を行うための必須条件と言えるでしょう。
PDCAサイクルの運用
採用戦略を策定したとしても、その成果が1年で現れるとは限らないのです。採用戦略の効果測定は、それがどの程度結果を生んだかを評価するために、年度ごとに行うべき振り返りによって実現します。振り返りを通じて、採用に関する各種施策や候補者の体験を改善するための課題を明らかにし、それらを改良していくことが必要となります。これが「PDCAサイクル」の進行方法です。
この振り返りを行わないと、毎年同じ過ちを犯す可能性があります。そのため、自社の採用活動を最適化するためには、必ずこの振り返りを実行することが求められます。振り返りを通じて、次回に向けた改善策を計画し、その実施と結果の評価を行い、さらなる改善につなげていく。これがPDCAサイクルです。このサイクルを回していくことで、自社の採用戦略はより洗練されていきます。
まとめ
この記事を通じて、採用戦略の基本的な概念やその利点、そして戦略立案のフレームワークを使用したプロセス、さらには重要なポイントと注意事項について説明しました。採用マーケットの状況や求職者の心理と行動を理解することにより、フレームワークを利用した採用戦略の立案は、自社が必要とする人材を効果的かつ効率的に採用するための鍵となります。
この記事が、皆さまの採用戦略立案の参考になり、採用活動を戦略的に成功へ導く一助となることを願っています。また、自社だけで採用戦略を考えるのが困難だと感じる企業様向けに、弊社では採用に関するコンサルティングサービスも提供しています。どんな問題でも、我々は喜んで皆さまのお手伝いをいたします。