企業が直面する人材不足という問題は、時として「求人を出しても応募が集まらない」「適任の求職者と出会えないために、業務が滞る」といった困難を生み出します。このような状況に直面されている採用担当者の方々も少なくないことでしょう。

過去においては、「人材が足りなくなれば新たに採用すれば解決」という単純な発想でも、企業のニーズに適った人材を見つけることができました。しかし、現代の社会においては、人手不足は企業の生き残りそのものを揺るがすほどの深刻な問題となっています。

そこで、今回は人手不足を引き起こす4つの主要な原因について解説し、それによる企業への5つのダメージとその回避策について詳しく述べます。この情報を参考に、企業の持続的な発展と成功のための戦略を練る際の一助としていただければと思います。

４つの人手不足になる原因と採用難になりやすい主要な業界

近年、企業における大きな問題の一つとして人手不足が挙げられます。日本国内だけでなく、世界中の多くの企業がこの問題に直面しており、その解消方法を模索しています。

2022年に行われた日本東京商工会議所の「人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況に関する調査」によれば、「人手が不足している」と感じている企業は全体の約64.9%にも上り、前年調査から15.0ポイントも増加しています。これは単に一過性の現象ではなく、今後も更に深刻化すると予測される問題です。

この人手不足という課題を解決するためには、まずはその発生原因を理解することが重要です。そして、採用に苦労している業界がどこなのかを把握し、そこから解決策を見つけ出すことが求められます。次の項目では、人手不足が生じる主な四つの原因と、特に採用難が顕著な業界について詳しく解説します。

●人手不足の主な原因

人手不足”という問題が存在する理由は一言では語れません。それぞれの企業や業界、場面により、その背後にある原因は大いに異なるからです。しかし、人手不足という現象が起こる理由を理解することは、その対策を考える上で非常に重要になります。

自社が抱える人手不足の問題、その背後に何があるのかを正確に把握することで、効果的な解決策を導き出すことが出来るようになります。そのため、まずは自社の人手不足がなぜ起こっているのか、その原因を探求することから始めてみましょう。これにより、問題の真因に迫り、より効率的な解決策を見つけ出すことができます。これは企業にとって重要なステップであり、人手不足という問題を解決する上で必須のプロセスでしょう。

●労働人口の減少問題

我が国が直面している社会問題である、少子高齢化は、企業が急速に直面する人材不足の一大要因となっています。その背後には、労働人口の減少が深く関与しています。

総務省統計局の国勢調査の結果を詳しく解説しますと、2011年を境に日本の総人口は減少の様相を見せています。特に注目すべきは、15歳から64歳までの年齢層の人口の動きで、この年齢層は働き盛りと言える世代で、国の労働力を支える重要な存在です。しかし、それらの世代の人口は1995年を頂点に減少傾向を示し、2018年には全体の約60%まで落ち込んでしまいました。

これらの数字から読み取れる事実は、労働人口の減少が深刻化しており、その結果として企業の人手不足が悪化しているという現実です。この問題は単に個々の企業の課題だけでなく、国全体の労働力を維持するためにも対策が必要となる大きな課題であると言えます。

●採用におけるミスマッチ

「採用ができたものの、結果的には双方にとって適合しなかった採用結果」は一般的に採用のミスマッチと呼ばれ、これは決して稀な事例ではありません。

採用のミスマッチとは具体的にどのような状況を指すのでしょうか。それは、一方で求職者が「入社してみたら、思っていた仕事内容や職場の雰囲気とは異なっていた」と感じる状況を指します。また、他方では企業が「この人は採用したポジションに必要なスキルや能力を持っていない」と判断する状況をも指します。

エン・ジャパンが実施した『月刊 人事のミカタ』の調査では、転職後に仕事とのギャップを感じたと回答した転職者が全体の82%にも上っていました。この結果は、採用者と求職者の間でミスマッチを防ぐ採用がいかに困難であるかを示しています。

採用のミスマッチが発生すると、早期退職や離職のリスクが高まります。そしてその結果、企業は人手不足という問題を抱えることになります。そのため、採用のミスマッチは企業にとって深刻な問題となり、その解消には高度な採用スキルと深い洞察力が求められます。

●離職率の上昇

自己実現やキャリアアップ、待遇の改善を目指し、転職への抵抗感が薄れてきた労働者が増えています。この現象は、労働力不足の問題を一層深刻化させています。

リクルートキャリアが運営する転職情報サイト、「リクナビNEXT」によると、「転職活動を行い、実際に転職を果たした」という回答者が全体の52.6%を占め、これは過半数を超える数値です。さらに、「転職活動は行ったものの、まだ転職していない」という人を含めると、その割合は65.0%に上ります。これらのデータから、「転職を行うことが当たり前」という風潮が広まりつつあることが伺えます。

また、より良い労働環境を望み、そのために退職を選択する社員の数が増えてきていることも、人手不足を引き起こす大きな要因となっています。これらの状況は、企業にとっては離職率の上昇という形で現れ、組織の安定や業績に影響を及ぼす可能性があるため、その対策が求められる時代となっています。"

●採用手法の多様化と進化

近年、求職者が求人よりも少ない、いわゆる売り手市場が続いています。これは企業が優秀な人材を採用したいという希望が、利用可能な求職者の数を上回っているという現象を指しています。このような状況下では、企業はさまざまな新たな手段を考え出し、採用の手法を多様化させるべく努力を重ねています。

伝統的な採用方法だけではなく、多角的なアプローチが必要となってきています。これは、企業が求職者との出会いを増やし、その中から最適な人材を見つけ出すための戦略です。

また、求職者の検索行動も変化してきています。SNSやインターネットを活用して、企業の評判や口コミを調べる人が増えています。その結果、採用人数の少ない中小企業は、大手企業と比べて採用において不利な状況に立たされることもあります。

企業間の競争が激化する中で、単に求人広告を出すだけでは人材の獲得が難しくなり、採用が進行しないことが人手不足の一因となっています。このため、企業はさらに創造的な採用戦略を考え、それを実行する必要があります。全体的に、人材採用のプロセスは多様化し、複雑化してきているのです。

●採用難・人材不足になりやすい業界

日本は近年、深刻な人材不足の問題を抱えています。それには様々な要因がありますが、その中でも一部の業界は、特に人材不足に陥りやすい状況にあると言われています。

そのような業界がなぜ人材不足に陥りやすいのか、またはその背後にある理由は何なのかを解説していきます。

●IT業界

2022年7月、株式会社帝国データバンクによる業界調査の結果が示すところによれば、「情報サービス（IT業）」に従事している企業の約64.9%が、人材不足を体感していると報告しています。

IT企業における業務は、多くの場合、特別な知識や技術を要求されます。そのため、これらのスキルを持った人材を見つけ、そして確保することは、一層困難な問題となっています。

急激に増え続けるITサービスの需要も、IT業界における人材不足の一因となっています。これらのサービスは、日々進化し続ける技術に対応するため、従業員が常に新しい知識や技術を学び続けることを求めます。したがって、一度必要なスキルを習得し終えたとしても、それが終わりではないというこの業界の特性から、一部の人々はIT業界を避けてしまうかもしれません。

さらに、高度な技術力を備えた人々は、フリーランスとして働くことを選ぶことが多く、この業界は比較的に独立しやすい環境を提供しています。これもまた、IT人材の不足を引き起こす要因の一つであると考えられます。

●建設業界

建設業は、一般的には「3K」と形容されることが多い職業の一つで、それは「きつい」「汚い」「危険」を指す言葉です。これらの要素から、特に若い世代からは敬遠されがちな業界であることは否めません。

具体的には、建設業は肉体的に厳しい仕事であることが多く、作業中には汗を流したり、泥に覆われたりすることも珍しくありません。そのため、業界のイメージとしては、必ずしも魅力的なものとは言えないかもしれません。

さらには、国土交通省の最新の調査によれば、建設業界の労働力は急速に減少しています。具体的には、建設業の就業者数が最も多かった1997年と比較すると、2020年時点での就業者数は28.1％も減少しています。

これには、若者が建設業に足を踏み入れる障壁がいくつか存在します。例えば、仕事が多くて休みを取ることが難しい、あるいは労働に対する賃金が低いといった理由から、若者が建設業に長期間勤めることを避ける傾向が見られます。

そういった背景から、建設業界では人材不足が常に課題となっています。これを解決するためには、業界全体で働きやすい環境を整備し、魅力的な待遇を提供することが求められます。

●福祉・介護業界

我が国の高齢化が進む中で、増加する介護者の需要に対し、福祉業界の人材は不足が続いているという事態が深刻化しています。

介護労働安定センターが行った令和3年度の調査結果によれば、人材不足を実感している介護事業所の割合が63％に上り、業界全体が人手不足に悩んでいるという実情が浮き彫りになっています。

介護の現場では、利用者本人だけでなく、その家族や他のスタッフとの円滑なコミュニケーションが業務の一部となっています。この人間関係の難しさが原因となり、退職を選択する人も少なくありません。

さらに、介護業界は体力的、精神的な負担が大きいというイメージが強く、新たな人材を獲得する際にも困難を伴うことが多いのが現状です。このような状況が、介護・福祉業界の人材不足問題を一層深刻化させています。

人材不足が企業にもたらす5つの影響

企業にとって人材不足は、重大な問題となることが少なくありません。この重大な課題は、業績に大きな影響を及ぼし、中長期的な企業の成長を阻害する可能性も秘めています。

たとえ企業が見込みのあるビジネスプランを構築し、大きな利益を予想していたとしても、その実行に必要な人材が不足していると、その計画はただの空想に終わってしまいます。人材が不足しているということは、企業がその計画を具体的に展開することができない、つまり業績を上げることができないということを意味します。

このような人材不足が企業にもたらす影響は幾つかありますが、ここでは特に注目すべき5つのポイントを紹介します。これから述べる点々を理解することで、企業の経営者や人材開発の担当者は、人材不足という課題に対してより具体的に対策を立てることができるでしょう。

①1人当たりの労働負担の増大

企業において人材が不足している状況が続くと、ほぼ必ずと言っていいほど一人一人の労働負担が増大します。なぜなら、人手が欠けても、それにより業務自体の量が減少するわけではないからです。

人的リソースが不十分な状況では、誰かに助けを求めることも困難になります。この結果、精神的なストレスが増大し、指定された時間内で全ての仕事を終わらせることが難しくなる可能性があります。それは、避けられない形で残業や休日出勤が増える事態を引き起こすかもしれません。

人材不足が続くと、従業員が過度の疲労に見舞われる結果となります。そして、それは従業員の業務品質にも悪影響を及ぼし、結果的には企業全体の生産性やパフォーマンスにも影響を与える可能性があります。

②労働環境の悪化による退職増加

現代社会は、人材の不足が深刻化しており、従業員一人一人の肩に重くのしかかる労働負担が増大しています。この増加する労働負担は残業時間の増加を招き、結果として心の負担、つまり精神的プレッシャーを増やしてしまっています。

このような状況が続けば、従業員が働く環境は日々悪化し、彼らのストレスは積み重なっていく一方でしょう。その結果、更なる良好な職場環境を求め、従業員は退職を選択する方向に向かう可能性が高まります。これが、労働環境の悪化による人材流出という現象です。

この問題は組織にとって深刻な事態であり、その解決策を見つけ出すことは組織の存続にとって極めて重要です。

③従業員のモチベーションの低下

2019年の秋に実施された厚生労働省の調査結果が示すところによれば、人材不足がもたらす職場環境に対する影響について質問された際、「働く意欲ややりがいを感じられなくなった」と回答した従業員の割合は、驚くべきことに約80%にも上りました。

対照的に、同じ質問を受けた企業側からのフィードバックは約60%と、従業員の認識よりもやや低めでした。このことから、企業が認識しているよりも実際には、従業員は人材不足による意欲の低下に悩まされており、これを深刻な問題と捉えていることが窺えます。

人材不足の状況では、従業員一人ひとりの負担が増大します。この負荷に対して十分な報酬が得られない環境下では、「先に退職した同僚を見て、自分も辞めようかな」と思う従業員が続出し、結果として退職者が増えてしまう可能性があります。これは企業にとっては重大な問題であり、解決策を見つけることが急務となっています。

④人材育成の機会損失

日本の厚生労働省が実施した調査によれば、8割以上の企業が人材不足の影響で、社員の能力開発のチャンスが失われていると報告しています。

人材不足の状況では、企業は雇用しているスタッフに過度のプレッシャーがかかり、毎日の業務に追われる状況となります。その結果、社員が自身のスキルを向上させる時間や、新たな知識や技術を学ぶ機会が奪われることになるのです。これは、個々の社員だけでなく、組織全体の成長にも影響を与え、長期的には企業の業績を悪化させる可能性もあります。

従って、企業は人材不足をただの短期的な問題として捉えるのではなく、それが組織の成長と発展に与える影響を深く理解し、対策を考える必要があります。例えば、新しい人材を採用するだけでなく、既存のスタッフのスキルアップを図るための研修や教育の機会を提供するなど、人材育成に注力することが求められます。

⑤事業継続の断念

労働の効率を最高に引き上げても、人手が足りない状態では、取り組める業務の量には必ず限界が訪れます。そういった局面に立たされた場合、事業運営自体が困難となり、結果的に事業そのものが成り立たなくなる可能性があります。

特に、その事業が会社の収益の大部分を占める主軸事業であったり、または業務を円滑に進めるために必要な人員が確保できないほどの深刻な人材不足に見舞われた場合、事業の継続を諦めざるを得なくなる可能性があるのです。これは会社としての存続そのものを危ぶむ事態にまで発展するかもしれません。

人材不足解消に効果的な採用手段5つ

現代のビジネス環境において、人材不足は深刻な問題となります。その解消のため、効果的な採用対策と労働環境の改善が大切となります。理想的な人材を引き寄せ、長期的に会社に留まらせるためには、どのような戦略を立てるべきか、疑問に思われる方も多いでしょう。

この記事では、人材不足解消のための具体的な手法を5つ紹介します。これらの対策を実行することで、企業の成長と持続的な成功に貢献する資質を持った人材を確保することが可能になります。私たちが提案する5つの採用対策は、各企業の特性やニーズに応じてカスタマイズし、適用することが可能です。

これらの採用対策は、効率的で効果的な人材の確保と、より良い労働環境の構築に役立ちます。労働環境の改善は、新たな人材の採用だけでなく、既存の従業員の満足度向上にも寄与します。これにより、人材の流出を防ぎ、企業全体としての生産性を高めることができます。

人材不足が問題となる現在、企業が競争力を保つためには、人材の採用と育成が必要不可欠です。適切な採用対策を立て、その実行に努めることで、企業の将来を担ってくれる優秀な人材を確保することができるでしょう。

まとめ

現在、我が国では深刻な人材不足が問題となっており、その解消のためには高品質な採用活動が必要不可欠となっています。

人材が不足するという状況が起きてしまった後では、その解決には相応の時間が求められます。そのため、早期からの対策が重要となります。

本記事で紹介した採用活動のマネージメントツールや、効果的な採用策を活用することで、採用活動をより効率的に進めることができ、人材不足問題の解消に繋げることが可能です。

人材を採用するための一つの手段として、自社の強みや魅力、そして自社が求める人材像を具体的に示すことができる採用サイトの制作を推奨します。

採用サイトは、自社を強く志望する求職者を引きつけるだけでなく、採用の際のミスマッチを防ぐなど、様々なメリットを持っています。これらを活かすことで、自社の採用力を大いに強化することが可能となります。