苦戦する“若手人材の獲得”は「SDGs」が解決策!?

2023/07/10

持続可能な開発を目指す国際目標、SDGsが注目されています。特に若い世代を中心にSDGsに対する関心度は高く、SDGsを企業の採用活動に活用することで、求職者の増加や優秀な人材の獲得につながる可能性があります。

この記事では、SDGsに積極的に取り組むことを企業の採用活動にどのように組み込むことができるのか、そのメリットと方法、そして注意すべきポイントなどを解説していきます。

目次

《SDGsについて》

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。この「持続可能な開発目標」は、2001年に制定されたミレニアム開発目標(MDGs)が2015年に終了したことを受けて、同年の9月に行われた国連の総会で新たに採択されました。それは2030年までに達成すべき、持続可能でより良い世界を実現するための行動計画を示しています。

SDGsの主要な目標は「誰一人取り残さない」ことで、そのための17の具体的なゴールと、それらを達成するための169のターゲットが設定されています。これらのゴールとターゲットは、発展途上国だけでなく先進国にも適用され、世界中のすべての国々が取り組むべき普遍的なものとされています。日本でも、これらの目標達成に向けて積極的な行動を求められています。

・若手人材の志望度を高められる

「あさがくナビ」を運営する株式会社学情が行ったアンケート調査によれば、驚くべきことに、学生の9割以上が、企業が「SDGs(持続可能な開発目標)」に力を入れていると知ると、その企業に対し「好感が持てる」と感じると述べています。「SDGs」は、環境問題や社会課題の解決に取り組むという意義深い目標を示しており、これに企業が積極的に取り組むことで、学生たちはその企業の社会的価値を認識し、好意を抱くのでしょう。

これから先、SDGsへの関心が高まる中で、企業のSDGsへの取り組みはさらなる注目を集めることが予想されます。そしてそれは、若手人材の志向性を高め、企業への興味と関心を引き出す強力な要素となります。つまり、SDGsへの取り組みは、企業が若年層の人材を引きつけるための有効な手段となると言えるのです。

だからこそ、企業はSDGsに対する取り組みを強化し、その情報を学生たちに伝えることで、自社への志望度を高めることが可能です。そしてそれは、将来の優秀な人材を確保するための大切な一歩となるのです。
*1出典:株式会社学情「SDGsに関するアンケート調査」(https://service.gakujo.ne.jp/220530)

・企業イメージアップによるブランディング効果

現代では、企業が単純に利益の追求を行うだけではなく、環境問題や貧困、ジェンダー平等といった重要な社会的課題に対する取り組みを強く求められています。これらの課題に対して積極的に取り組むことで企業は、社会的責任を果たす存在として認識されるようになります。これは企業のブランディング面で大きな効果を発揮します。

企業のイメージやブランド価値を高めることは、株価の向上や資金調達の容易化など、ビジネスの各面でポジティブな影響を及ぼす可能性があります。このような社会的な課題への取り組みは、企業の価値を向上させ、結果的に企業の持続的な成長を支える重要な要素となるのです。

・社会貢献性を重視する優秀な人材の獲得にもつながる

企業の社会貢献は、学生に対する魅力的なイメージを形成し、求職の動機づけにも大いに寄与します。しかし、その効果はそれだけに留まらず優秀な求職者や転職を希望する人々の心を引きつける手段ともなるのです。年収が800万円以上という高収入層の人々は、社会貢献に対して強い関心を示しています*2。特に、持続可能な開発目標(SDGs)を推進している企業に対する親和性が高いとされています。そのため、企業としては、優秀な人材を引き寄せるためにSDGsの取り組みを積極的に進め、その活動内容を広く発信することが重要になっています。
*2 出典:エン・ジャパン株式会社「20代の転職・仕事観 意識調査2019」
(https://corp.en-japan.com/newsrelease/2019/16949.html)

・既存社員のモチベーション向上と満足度、離職率の低下

例えば、「働きがいも経済成長も」という目標の下、職場環境をより働きやすいものに改善することで、社員たちの企業や仕事への熱意や満足感が高まります。これは、社員のモチベーションを刺激し、全体の生産性を向上させる可能性があります。

さらに、SDGsに対する具体的な取り組みを推進することで、社員自身が「自分の仕事や会社の事業が社会に貢献している」という実感を得ることができます。これは、社員の企業への帰属意識を深め、モチベーションをさらに引き上げる効果があります。その結果、離職率が低下し、社員の安定した雇用を確保することが期待されます。

つまり、社員のモチベーションや満足度を向上させることは、企業の成長と繁栄に直結し、職場環境の改善はその一部となります。これらの取り組みは、社員の幸福感を高め、企業の持続可能な成長を促進する重要な要素となるのです。

・求職者への情報発信が重要

優れた才能を見つけ、自社に引きつけるためには、求職者に対する情報発信が不可欠な要素となります。最初に行うべきことは、自社の事業の詳細、制度、そして働きやすさを「我々はSDGsにどのように取り組んでいるのか?」という視点から見直すことです。

例えば、一部の飲料メーカーは、持続可能な生産と消費を支えるSDGsの目標「12. つくる責任、つかう責任」を達成するために、ペットボトルのリサイクルによって新たなペットボトルを生成する取り組みを行っています。

さらに、「13. 気候変動に具体的な対策を」の目標を達成するためには、温室効果ガスの削減と、それによる低炭素社会の実現が必須となります。この問題に対処するため、一部の自動車メーカーは、環境に優しい電気自動車の普及に力を注いでいます。

こうした具体的な取り組みを積極的に公表することで、自社のSDGsへの取り組みについて求職者の理解を深めることが可能となります。これにより、SDGsに関心を持つ優秀な人材の採用がより容易になるでしょう。

《SDGs取り組みにおける留意点》

企業が自社の主要業務と連携したSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを実施することは、一見すると容易なことではないかもしれません。企業の規模や能力、そして業務の特性によっては、「すぐに取り組みを始めるのは困難だ」と感じるかもしれません。

そこで、この問題を解決するための一つの提案として、人材採用の段階でSDGsの取り組みを進めることが挙げられます。人材採用は全ての企業が行う基本的な業務であり、取り組むための追加的なコストも大きくはならないでしょう。また、このアプローチは、業種が何であっても適用可能であるため、非常に効果的な手段となります。

《SDGs推進をどうすすめていくか》

人材ビジネスの場では、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが望まれています。その初歩的なステップとして、「福利厚生制度」や「職場環境」の見直しを考えましょう。意識していない間にも、実はすでにSDGsへの取り組みが行われていることもあるのです。

SDGsの目指す「3.全ての人に健康と福祉を」や「5.ジェンダー平等を実現しよう」などの目標については、すでに達成している企業もあるかもしれません。

それらの企業は、日々の業務で「当然に行っている」活動を「適切に伝える」ことにより、学生たちにSDGsへの意識と取り組みを示すことが可能です。

具体的な手段としては、学生たちが最も閲覧する「企業の採用サイト」に、自社のSDGsへの取り組みを詳細に掲載することを推奨します。これにより、学生たちが自社の価値観や取り組みを理解しやすくなり、SDGsへの意識を共有することができるのです。

・SDGsウォッシュになってないか注意を払う

企業が自社のSDGsへの取り組みをPRする際、その行動が「SDGsウォッシュ」と呼ばれるうわべだけの取組でないことを確認することは非常に重要です。「SDGsウォッシュ」は、一見、持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいるように見えるが、それが形だけの取り組みで、その裏側で具体的な行動が伴っていない場合の状態を指します。このような実質的な取り組みのない企業やビジネスを批判する際に使われる言葉です。

具体例としては、自社の製品が環境に優しいというイメージを強調するために、天然素材やリサイクル素材を使用していると宣伝しながら、製造過程で大量の二酸化炭素を排出しているファッションブランドがあります。また、海洋生物の保護や海洋環境の改善に取り組んでいるというアピールを行いつつ、海外の自社製造工場で労働者に対して低賃金での労働を強いているグローバル企業も存在します。これらは全て「SDGsウォッシュ」の典型的な例と言えます。

・適切な情報発信を気を配る

前に触れた「SDGsウォッシュ」を避けるためには、情報発信の正確さと適切さが重要となります。この点について、具体的なポイントを以下に示します。

1つ目は、根拠のない情報や情報源が不明確なものは避けることです。確固とした証拠や信頼性の高い情報源をもとにした情報発信が求められます。

2つ目は、現実よりも大げさな表現を避けることです。情報は事実に基づいており、過剰な演出や誇張表現は控えるべきです。

3つ目は、曖昧な表現を避けることです。誤解を招かないような明確な言葉を選び、その意味をしっかりと定義して使用することが大切です。

最後の4つ目は、事実と関連性の低いビジュアル(写真やイラストなど)は使用しないことです。情報発信に使用するビジュアルは、その情報内容を効果的に伝え、理解を深めるためのものであるべきです

・採用サイト構築も重要

SDGsに関する取り組みを効果的に伝えるための一つの手段として、自社の採用サイトの活用がおすすめです。自社の採用サイトは、制約なく情報を載せることができ、また、ほぼ全ての応募者が訪れる場所であるため、ここでの情報発信は非常に重要です。

SDGsに関連する新しいプロジェクトを開始したり、既存のシステムを改善したりする場合、その情報を迅速に採用サイトに掲載することで、応募者に対して企業の最新の取り組みを効率的に伝えることが出来るようになります。

・求職者の動機付けツールとしての採用サイト

採用サイトは、求職者の大半、具体的には約80%が訪れると言われる重要な情報源です。したがって、求職者が「この会社で働きたい!」と強く思うことを後押しするためにも、採用サイトの作成や改善は非常に重要な業務だと言えます。

採用サイトを通じて、自社の特色や仕事の魅力を適切に伝えることで、求職者のモチベーションを高めることが可能です。自社のビジョンや働く人々のエネルギーを伝えることで、求職者が自社を選ぶ強い動機を持つことを助けるのです。