中途採用社員の力を引き出す会社に早くなじめる体制作りとは

2023/09/22

新しく入社して貰った社員に自身の能力を最大限に発揮してもらうことは不可欠なポイントです。しかし、残念なことに中途採用した社員が早期に退職してしまうという事態がたびたび発生します。

早期退職は、企業や人事担当者にとって悩みの種の一つです。なぜなら、中途採用した社員への投資、つまり採用にいたるまでや教育訓練にかけた時間とコストが、一切のリターンを得ることなく損失になってしまうからです。

さらに、社員が去ることによる欠員は、ただ単にそのポジションが空くだけでなく、業務の進行に遅れを生んだり、他の従業員の士気を低下させるなど、企業全体に悪影響を生む可能性があります。

そこで、私たちが考えなければいけないことは、中途採用した社員がなぜ早期退職するのか、そしてそれを防ぐにはどうすれば良いのかということです。これから、早期離職を防止する対策について考えてみましょう。

中途採用と新卒採用の違いについて

中途社員と新卒社員には、まずは年齢と社会経験の質と量といった大きな違いがあります。

中途社員は、それぞれが何らかの形で特定の役割を持って働いた経験があります。そのため、彼らの存在は、即戦力として会社に新たな風を起こすことを期待されています。しかし一方で、彼らは会社からの高い期待によりプレッシャーを感じることもあり、それぞれのいままでのバックボーンによっては、企業文化の浸透が難しいという課題も存在します。

それに対し、新卒社員は大部分が20代前半で、働いた経験は主にアルバイトや短期就労が中心となります。彼らのビジネスパーソンとしての社会経験はまだまだ浅いものの、大学や高校でのスポーツや文化活動を通じて、物事へとことん取り組む姿勢を確立している者も多く見受けられます。また若さゆえの新鮮な視点を期待することができ、長期間にわたる社員教育を通じて企業文化の浸透が容易です。

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中途採用社員の離職を防ぐ

中途社員の離職防止は、企業がスムーズに運営を進めていくにあたり大変重要なポイントとなります。

一人でも退職者が出ると、その欠員を埋めるまでの期間、既に在籍している社員たちの負担が大きく増加します。これにより、心身ともに疲れ果てた他の社員たちが退職を決意する、いわゆる連鎖退職が発生することもあります。

特に中小企業の場合、人材不足に陥ると経営そのものが立ち行かなくなり、最悪の場合、倒産にいたる事例もあり、社員の退職は企業存続そのものに直結するリスクの一つと言えるでしょう。

このような早期離職社員が増加すると、企業にとっては大きなダメージとなります。なぜ中途社員が早期退職に至ってしまうのか、その原因を一緒に考えてみましょう。

早期退職がもたらす損失と企業にとってのリスク

中途採用社員に限らず、社員が早期に退職すると、企業全体に大きな影響を及ぼします。従業員の生産性を保つためにも早めの対策が必要となります。

1つ目の損失として、時間的な損失があげられます。人事部門では、雇用の計画立案から候補者の選定、入社後の手続きまで多くの時間を費やします。これらの時間が無駄になってしまいます。

また、社員教育や研修にかけた時間も無駄になります。中途社員が配属された部門だけでなく、会社全体がこの時間的な損失を受けることになります。

さらに、早期退職者を教育や指導した担当者が、自身の責任感からストレスを感じることもあります。そのため、「早期退職は退職者自身の意志によるもの」という前提とした適切なフォローが重要となります。

2つ目の損失は金銭的なものです。転職サイトや人材紹介会社への費用が、企業にとっては直接的な損失となります。さらに、早期退職者の業務を他の社員が担当することになり、その結果として残業手当が増えることもあります。

特に4月から6月の間に残業が増えた場合、9月以降の1年間で社会保険料の負担が増加する可能性もあります。

3つ目のリスクとして、会社がブラック企業と認識されるリスクがあげられます。早期退職に関する内容が企業口コミサイトに掲載されると、その企業は新入社員を適切に教育しない、または働きにくい環境であるとの印象が広がる恐れがあります。

その結果、「ブラック企業」のレッテルを貼られる可能性もあり、これが原因で新たな採用が難しくなることもあります。結果として、業務の継続や事業の成長に影響をおよぼすリスクがあります。

中途採用社員が早期離職する3つの主な理由

新しい職場で働き始めると、今までとは違う環境と向き合いながら、多くの課題を解決していかなければなりません。それらの課題にうまく対処できずに早期離職を選択する中途社員も少なくはありません。したがって企業側としては、早期離職を防ぐために、何が原因であるかを理解し、改善に向けて取り組んでいくことは大変重要です。

ここでは、中途社員が早期に離職を決断する3つの理由を掘り下げてみましょう。

1. 仕事内容が求人情報と一致しなかった
新たな職場での仕事が、求人内容と大きく異なると、会社との信頼関係が構築できないと思う可能性があります。その結果、早期離職することもあります。求人内容と実際の仕事内容のギャップが無いように求人内容を書くこと、またある場合にはそのギャップについて十分に納得するまで説明し理解を促すことが重要です。

2. 職場の人間関係が良くなかった
職場の人間関係が良好でないと、働きづらさを感じる中途社員も多いです。特に、業務上の問題について相談した際に、適切な対応を受けられないと、職場に対する不満が高まり、退職を考えるようになります。2018年に施行されたパワハラ防止法により、劣悪な職場環境は法的にも問題となります。

3. 労働環境に対する不満
長時間労働が常態化していたり、有給休暇を取得しにくい環境では、働く者自身の育児や介護などの長期的なライフプランを描くことが難しくなります。また、新型コロナウイルスの影響により、ソーシャルディスタンスの確保や職場内の清潔保持など、感染症対策の不備も労働環境に対する不満となっています。

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早期離職防止の対策

新たに中途採用社員を迎える際、その社員が早期に会社に馴染むようにするため、企業として彼らの受け入れ体制をしっかりと整えておくことがポイントです。

よく「人間関係を築く際には第一印象が大切」などと言われますが、それは企業における人間関係にも当てはまります。新たな社員が会社に対して抱く第一印象、つまり入社初期に感じる会社の体制やその他の社員との雰囲気が、その後の長期勤務の意欲や安心感に大いに影響を与えます。そのため、その印象を良いものにすることは言うまでもありません。

ここでは、新たな社員を迎える前に企業が準備しておくべき点や、社員が会社に馴染みやすい環境を作り出す方法について説明します。

そして、これらの対策は新たな社員だけでなく、既に在籍している社員のエンゲージメントを向上させる効果もありますので、企業としては積極的に取り組んでいくべきです。

受け入れ体制をどう作っていくか

新入社員がその能力を最大限に活かせる環境を作るためには、その受け入れ体制を整備しておくことが不可欠です。

「私たちは新入社員を歓迎している」「私(新入社員)はこの会社で温かく迎え入れられている」というお互いの気持ちの通じ合いが、組織全体のモチベーションを高めることにつながるでしょう。

部署レベルで始められる、3つの取り組みについて解説します。

1つ目の取り組みは、現場と人事担当者との情報を共有することです。採用活動を始める段階から、現場の管理職と人事担当者が採用する予定の人材の要件をすりあわせておくことが重要です。

採用面接後に得られた入社予定者の情報をもとに、具体的な業務内容や入社後のサポートプランを作り上げることで、新入社員の受け入れがスムーズに行えます。

また、現場が求める入社予定者のスキルや思考方法を具体的に理解するために、現場の管理職が採用面接に参加することも有効な手段となります。

2つ目の取り組みは、新入社員の研修プランを明確にすることです。入社直後から、社内の仕事の進行方法や手続きの方法などのローカルルールに焦点を当てた研修を行うための準備をしておくことが重要です。

新入社員が社内の文化にスムーズに溶け込むために、「馴らし運転」の期間を設けると良いでしょう。

研修を実施するためには、テキストやマニュアルの作成が必要となるため、その過程で業務内容が見える化されるというメリットもあります。

3つ目の取り組みは、メンター制度を導入することです。新入社員が気軽に相談できる環境を作るためには、メンター制度を設けることが重要です。

特に医療や介護の分野では、「プリセプター制度と呼ばれる、特定の先輩が新入社員の業務指導から日常の相談までを担当する体制が広く導入されています。

「必ず誰かに相談できる」環境を整えることで、新入社員が誰に相談すべきか迷って困るという状況を避けることができます。

会社に馴染みやすくするためには

新しい職場で働き始める中途社員が、自身の能力を最大限に活かすためには、組織全体として新人をサポートする環境を作ることが必要です。

「私たちは新人を歓迎しています」と「私(新入社員)はここで歓迎されている」というお互いの気持ちの通じ合いがあると、全体のモチベーションアップにつながります。
ここでは、部署レベルで取り組むことができる3つの方法をご紹介します。

1つ目は、中途社員を関係者全員に紹介することです。新入社員が職場に慣れるためには、早い段階で業務関連の人々に紹介されることが効果的です。中途社員が会社内で認識されることで、彼らが仕事をしやすい環境を作ることができます。上司や先輩が一緒に紹介に行くとより良い結果が得られます。そして、良好な関係を維持するために、中途社員に対してコミュニケーションの機会を逃さないようにすることも重要です。

2つ目は、入社当日に上司または研修担当者が中途社員を昼食に誘うことです。こうすることで、新人の初日の緊張感が和らぎ、人間関係の構築に大いに役立ちます。中途社員の昼食代を会社が支払うことで、新人は自分が歓迎されていると感じるでしょう。昼食会を開催する場合は、入社前に「入社当日の昼食は会社が用意する」と伝えておくと良いでしょう。

3つ目は、積極的な声かけを行うことです。仕事の合間に「大丈夫?」と声をかけることや、時折ねぎらいの声をかけることで、中途社員は自分が気にかけられていると感じ、安心します。また、適度な雑談は職場の人間関係を深め、職場での孤立感を防ぐ効果があります。

まとめ

中途採用の社員が早くに退職してしまう主な理由として、企業側の受け入れ体制や、採用前後のコミュニケーション不足などが考えられます。これらの問題は、受け入れる企業の側により多く見受けられるようです。

中途採用社員が長く働くことができるよう、適切な受け入れ体制を構築することはとても重要なポイントです。これにより、個々の能力を最大限に活かすことができるようになり、その結果、会社の業績向上に寄与することができます。更に、これは既存の社員を尊重し、大切にするという企業の取り組みにも繋がり社員のエンゲージメント向上にも寄与します。

中途入社社員が入社後に「面接の時に聞いてたのと違う」と感じるギャップを最小限にすることに留意して、入社初日から中途採用社員のサポートを行うことが重要です。これは、中途採用の社員が新たな職場で安心して働き続けるために不可欠なポイントになります。