企業が新たな人材を探す際、欠かすことのできないツールが「求人票」です。
現在、人材採用の競争が激化しており、多数の企業が優秀な人材の確保に頭を悩ませています。その中で、競争相手の企業から一歩リードして優れた人材を引き寄せるためには、自社を他の選択肢から突出させることが必要となります。
そのために、求人票の作成にあたり、どのようにすれば【求職者の心を掴む求人票】が作れるのかを理解しておくことが重要です。
私たちは、数多くの企業の求人票作成をサポートし、採用成功に向けた支援を続けてきました。この経験を元にした求人票作成の基本から、人々が魅力を感じる求人票作成のポイントについて、詳細に解説します。
この記事をしっかりと読み込み、成功する採用のための「求職者の心を掴む求人票」の作成に取り組みましょう。
目次
- 求人票について知らないといけない基本
●求人票の目的と定義
●必須事項と記入例 - 絶対に書いてはならない3つのポイント
●《注意!》求職者に誤解を与える記述は法律違反になる可能性も - 魅力あふれる求人票作成のための3つの重要ポイント
(1)誰が読んでも理解できるように記載する
(2)募集している仕事の魅力を伝える書き方を行う
(3)他社とは異なる、自社の強みや魅力を記載する - 《ターゲット別》オススメの求人掲載手法
(1)高卒採用
(2)新卒採用
(3)中途採用 - まとめ
求人票について知らないといけない基本
はじめに、求人票についてみていきましょう。
求人票の目的と定義
「求人票」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、企業が新たに労働力を募集する際に重要なツールとなります。ここでは、その定義と目的について詳しく解説していきます。
そもそも「求人票」とは何でしょうか。これは職業安定法に基づき、募集する職種の労働条件を具体的に示した書類のことを指します。この求人票は、ハローワークや求人広告、求人情報サイトなどに掲載されることで、求職者に対して労働条件を公開する手段となります。
そして、求人票の主な目的は何でしょうか。それは、求職者の関心を引き、応募を促すことです。求人票は数多く存在しますので、自社の求人票が目立つためには、法律に則った適切な内容を記載し、なおかつ自社の魅力を効果的に伝えることが必要となります。
採用担当者にとって、求人票の記載ルールは非常に重要です。適切な知識がなければ、求職者に対する適切な情報提供ができず、採用のチャンスを逃してしまう可能性があります。
必須事項と記入例
求人票作成には、特定の情報を必ず明示するという法律があります。これは職業安定法によって定められているルールです。以下に、求人票に必ず含めるべき項目とその記入例をご紹介します。この情報を確認し、適切な求人票作成に役立ててください。
<必ず明示しなければならない項目>
1. 勤務者が担当する業務の詳細
2. 労働契約の期間の長さ
3. 労働を行う場所
4. 労働開始と終了の時間、定められた勤務時間を超える必要があるか、休憩時間、休日の設定
5. 労働者に支払われる賃金
6. 健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険の適用についての情報
<求人票の記入例>
業務内容:一般事務
契約期間:期間の定めなし、試用期間あり(3カ月)
就業場所:本社(福岡県福岡市中央区天神1-1-1)
就業時間:9:00~17:00
休憩時間:12:00~13:00
休日:土日、祝日
時間外労働:あり(月平均15時間)
賃金:月給20万円(ただし、試用期間中は月給18万円)
加入保険:雇用保険、労災保険、年金保険、健康保険
募集者:株式会社いろは
雇用形態:正社員
参考文献:
厚生労働省・都道府県労働局「労働者を募集する企業の皆様へ」
厚生労働省「求人企業の皆様へ 労働者募集ルールが変わります」
絶対に書いてはならない3つのポイント
次に、求人情報を作成する際に絶対に避けなければならない3つのルールについてご紹介します。これらは労働者保護の観点から、法律で定められた制限があるため、求人票を作成する際には十分に注意が必要です。
(1)性別を限定する表現
男女を問わず、誰もが均等に働く機会を得ることができるように、日本の法律では性別を特定して募集する表現は禁止されています。具体的には、以下のような表現が禁じられています。
・男女のどちらか一方だけを対象とした募集や採用
・男女によって求人の条件を変えること
・選考の方法や基準に男女差をつけること
・男女のいずれかを優遇すること
・求人票の内容説明などで男女差をつけること
ただし、業務遂行上、特定の性別が必要となる合理的な理由がある場合や、男女格差の改善のために一方の性を優遇する措置は法律で許されています。
(2)年齢を限定する表現
性別と同様に、年齢による差別を防ぐため、年齢を限定する表現も禁止されています。これは、求人票を作成する際に年齢不問を明記していても、実際の選考過程で年齢を理由に採用を決めることは禁止されています。
ただし、年齢制限に合理的な理由がある場合(例:定年が存在し、その対象年齢以下の者を募集するなど)や、特定の年齢層の雇用を促進する施策の一環として年齢制限を設けることは認められています。
(3)最低賃金以下の給与の求人
また、各都道府県で定められた最低賃金以下の給与を提示する求人も禁止されています。これに違反した場合、法律により罰金が科せられる可能性があります。最低賃金は毎年見直されるため、その情報については常に最新のものを確認し、適切な給与を提示するようにしましょう。
《注意!》求職者に誤解を与える記述は法律違反になる可能性も
求人情報に虚偽の情報を故意に掲載した場合、法律により最大6ヶ月の懲役または最高30万円の罰金が命じられる可能性がある(労働基準法65条8号)という事実を理解しておくことが重要です。
さらに、虚偽の情報が故意ではなく誤解を生むような形で掲載された場合でも、それが法律違反に当たる可能性があります。求職者との間で不必要なトラブルを引き起こす可能性もあります。したがって、求人情報の記載には細心の注意を払い、確認作業を丁寧に行うことが必要です。
魅力あふれる求人票作成のための3つの重要ポイント
求人票の作成は、必要なルールを守り、重要な項目を正確に記載することが基本です。しかし、それだけでは、求職者の注目を集め、彼らを「応募したい!」と思わせるような魅力的な求人票にはなりません。
では、どのような手法を使用すれば、求職者の関心を引きつけ、彼らに強い応募意欲を感じさせる求人票を作成することができるのでしょうか。
ここでは、そのための戦略として、求人票をより魅力的に見せるための3つの重要なポイントを詳しく説明します。これらのポイントを採用することで、求人票はただの情報提供でなく、求職者にとって魅力的な提案となり、彼らの心を確実につかむことができます。
(1)誰が読んでも理解できるように記載する
求人広告を作り上げる際、最も重要視すべきポイントは、広告の内容が読む人にどれほど伝わるかという点にあります。求職者がその求人広告を見て、「なんだか難しそう」「何が書いてあるのかよくわからない」と感じるような求人広告に目を通しても、応募する気にはなりません。
従って、特定の業界や仕事内容に詳しくない求職者でも、すんなり理解できるように、専門的な用語を避け、誰もが見ても明確に理解できる、簡潔で分かりやすい文章を作成することが必要です。
それでは、どのように書けば適切なのか、優れた例と不適切な例を比較してみましょう。
《営業事務の職務内容の記載例》
(不適切な例)
【主な職務内容】
書類作成、パソコン入力
(適切な例)
【主な職務内容】
営業成績や売上データの集計・分析業務をExcelを用いて実施し、営業管理表の作成・運用を行います。なお、パソコンは一人一台支給されますし、パソコン操作や業務に関する研修制度も充実していますので、未経験の方でも安心して業務に取り組むことが可能です。
(2)募集している仕事の魅力を伝える書き方を行う
多くの求職者は、自身が入社した後の具体的な姿や、どのようなキャリアを築けるのかに重きを置いています。そのため、求職者が「自分がどのような会社で働くのか」「どのような仕事を任せられるのか」「自分の希望に合った職場なのか」をイメージできるように、仕事内容やキャリアパスについて具体的に伝えることが必要です。
それでは、どのように書けば効果的なのか、営業職の仕事内容の書き方について、良い例とそうでない例を比較して見てみましょう。
《営業職の仕事内容の書き方》
(改善が必要な例)
【仕事内容】
自社製品の新規開拓営業
(良い例)
【仕事内容】
当社が開発した顧客管理ソフト(予約台帳・顧客リストの管理ツール、顧客データ解析ツール等)の提案営業を行っていただきます。中小企業を中心とした法人向けの営業活動となります。主なターゲットは、企業の総務部や飲食店などの実店舗です。新規開拓は、主に電話や訪問を通じて行い、既存顧客との継続的な関係を築くためのフォローアップも約2割の時間を割いて行います。
営業経験がない方でもチャレンジでき、異業界から転職して2年後にはリーダーとして活躍しているメンバーもいます。短期間でキャリアを積むことが可能な職場です。スキルアップのための勉強会の開催や、資格取得を支援する制度も設けております。新たなチャレンジを求める方、自身の能力を試したい方には最適な環境です。
(3)他社とは異なる、自社の強みや魅力を記載する
求人票作成においては、会社の文化や理念やビジョンそして企業活動など、自社がどのような存在であるかを多角的に訴えることが大切です。
自社の特色や魅力を具体的に示すことにより、それに共感する候補者、すなわち、求めている人材からの応募を惹きつけることが可能となります。
自社の特色や魅力をどのように表現すればよいか困った場合は、以下のアプローチを試すことをお勧めします。
《自社の強み、魅力の発見方法》
・社員の特性や、オフィスの雰囲気はどういうものか
(例)営業未経験者や異業種から転職した人々が7割を占めています
(例)オフィスはどんな人にも気軽に話しかけられ、自由に意見を述べることができる環境です
・どのような社内イベントが開催されているか、休日はどのように過ごしているか
(例)「ファミリーデイ」を設け、社員の家族を招待し、お父さんやお母さんの働く様子を見せたり、BBQや花見といったイベントを実施しています
(例)山登り部やゴルフ部など、共通の趣味を持つメンバーが定期的に活動しています。初心者も多く所属していて、どなたでも参加しやすい環境です
・どのような価値観を大切にしているか
(例)ライフワークバランスを尊重し、「毎週水曜日はノー残業デー」を導入しています
(例)働きやすい職場を目指し、産休・育児休暇の活用を推奨しています(現在:育児休暇利用中 2名、取得予定2名、復帰予定1名)
これまでに述べた3つのポイントを取り入れることで、魅力あふれる求人票の作成が可能となります。
《ターゲット別》オススメの求人掲載手法
新たな人材を迎え入れるために、魅力的な求人票を作り上げることは非常に重要です。しかしその次に待ち受けるのが、どのようにして求人票を広め、どのように採用活動を始めるかという問題です。
求人票の掲載方法は様々で、ハローワークや求人情報サイト、さらには教育機関など、その範囲は広範に及びます。しかしそれぞれの方法が全ての求人に適しているわけではありません。採用したいターゲットによって、最適な求人掲載方法は大きく変わるのです。
ここで、それぞれの採用のケースに合わせた最適な求人掲載方法をご紹介します。それぞれ「高卒者向け」「新卒者向け」「中途採用向け」の3つのケースに分けて、それぞれのケースに最適な掲載方法を解説していきましょう。
(1)高卒採用
高卒採用については、学業を最優先し、健全な学校生活を保持する目的のために、求人票の記載事項や掲載手法について特定の規則が設けられています。
これらの規定されたルールを遵守しながら、求人票を掲示することが求められています。
《高卒採用における求人掲示の手順》
・職業安定所(ハローワーク)を介して作成された求人票を、高校へ郵送するか直接持参する
(2)新卒採用
新卒採用は、一度に特定の数の新入社員を採用する方法であり、多数の求職者からの応募を受け付け、その中から企業の要望に適した候補者を選び出す作業が必要です。
多くの求職者に企業の求人情報や組織についての情報を知ってもらうためには、効果的な求人広告の掲載方法を選択することが不可欠です。
《新卒採用向けの求人広告の掲載方法》
・新聞や雑誌、求人ウェブサイトなどの広告媒体を活用
・企業自身のウェブサイトや採用専用のウェブページを作成
・大学、短期大学、専門学校などの教育機関と連携
これらの方法を活用することで、企業は自社の魅力を伝え、求職者が企業の情報を理解しやすくすることが可能になります。これにより、企業と求職者双方にとって最適なマッチングが実現するでしょう。
(3)中途採用
企業が特定のスキルを持つ人材を探す際、またはすぐに業務に導入できる即戦力を求める際に頼りになるのが中途採用です。この過程で最も重要なことは、求職者に対して自社が求めている人材像や、自社の企業風土、ビジョンを明確に伝えることです。
求人情報を広げる方法はさまざまですが、自社のメッセージを効果的に伝えられる方法を選ぶことが重要です。その一方で、自社のブランディングを強化し、適切な候補者を引き付けるためには、求人媒体の選択も大切な要素となります。
中途採用の求人掲載方法としては、以下のようなオプションがあります。
1. 紙媒体や求人サイトなどの求人媒体:これらのプラットフォームは広範囲の求職者にリーチすることが可能であり、より多くの応募を得るための効果的な手段と言えるでしょう。
2. 人材紹介会社、人材派遣会社:これらの組織は専門的なスキルを持つ人材を探す企業に対して特に有効なソリューションを提供します。彼らは求職者のスキルを評価し、企業のニーズに合った候補者を紹介します。
3. 自社サイト、採用ホームページ:これらは自社のブランドを強化し、求職者に対して自社のビジョンや文化を伝える絶好の機会を提供します。
4. 職業安定所:公的な機関である職業安定所は、求職者と企業との間でのマッチングをサポートします。これは特に地域密着型の企業にとって有用な方法であると言えます。
以上のように、中途採用の求人掲載方法は多様です。企業のニーズや求職者の期待に合わせて適切な方法を選ぶことが、成功した人材採用につながるのです。