採用ペルソナとは? 採用戦略に重要な理由やメリット、作り方とポイントを紹介

2023/04/20

はじめに

採用活動におけるペルソナ(採用ペルソナ)とは、自社が採用したい人材像のことです。採用活動ではこのペルソナ設定し、その精度を高めることが成功のために大切です。

本記事では、企業の採用活動において重要な役割を担う採用ペルソナについて、メリットや必要な要素、作成時のポイントまで詳しく解説します。「採用活動で思うような成果が得られない…」とお悩みの経営者様・人事責任者様・人事担当者様は、採用戦略の見直しに参考にしてください。

目次

採用ペルソナとは

採用活動におけるペルソナ(採用ペルソナ)は、採用したい人材像を具体的にイメージに落とし込んだものを指します。そもそも、「ペルソナ」とは、ラテン語で「仮面」「役柄」「人物」を意味します。マーケティング活動においては、製品を購入したりサービスを利用したりする仮想の利用者像を指します。

採用活動においてペルソナを設定することは、求める人物の応募を増やしたり、入社後のミスマッチを防いだりするうえでとても重要です。

人材採用難が叫ばれる昨今では、検討不十分な状態のまま応募を集めようとしても、上手くいかないケースが増えています。
企業は採用活動を開始する前に、採用ペルソナをしっかりと設定すること。これが、採用実施するにあたって重要なポイントになっています。

ターゲットとの違い

「ペルソナ」と似ているワードとして、「ターゲット」という言葉があります。どちらもマーケティング分野でよく使われており、使い分けに悩まされる方も少なくありません。
ここでは、「ペルソナ」と「ターゲット」の違いについて解説します。「ペルソナ」と「ターゲット」の違いは、人物像を設定する際の細かさ(設定範囲)です。
「ペルソナ」は、前職での経験や趣味、価値観、行動特性などの設定をすることで人物像を詳細に想定するのに対し、「ターゲット」は性別や年齢、居住地など、自社が求める人物のスペック(集団属性)を絞り込むイメージで、ペルソナほど細かく設定されません。

例えば、ペルソナは「30代・女性、埼玉県在住、経理業務の経験あり、経験年数5年、趣味:美容・映画 SNSに関心あり」といったように詳細なユーザー像を作り込むのに対し、ターゲットは「30代・女性・経理」といった具合で特定のグループを絞り込みます。
「ターゲット」を絞り込んだとしても、現場がイメージしていた人物像と、採用担当者がイメージした人物像に差異が出てしまう可能性があります。
自社が求める人材を採用するためには、より詳細な人物像がイメージできる「ペルソナ」の設定を行うことが重要なのです。

採用ペルソナのメリット

採用ペルソナを設計することは、大きく3つのメリットがあります。
より効果的な採用活動につなげるため、ペルソナを設定するメリットを理解しておきましょう。

【メリット1】入社後のミスマッチを防ぐことができる

採用ペルソナを設計する最大のメリットは、入社後のミスマッチを防止できることです。せっかく採用した人材が早期離職してしまうことは、手間やコストをかけて行った採用活動を無駄にしてしまいます。

入社後のミスマッチにつながりやすい要因は、社風や企業理念、報酬体系が合わないなどが考えられます。
採用ペルソナを設計することによって、採用したい人材が「どのような人柄なのか」、「必要な経験やスキルは何か」といった情報を具体的にイメージすることができるので、選考時点で自社に合う人材かどうかを見極めやすくなり、入社後のミスマッチを防ぐことができるのです。

【メリット2】自社にマッチした求職者への訴求がしやすい

求める人材からの応募を獲得するためには、「企業がアピールしたい情報」だけでなく、「求職者が求めている情報」を発信することが重要です。

採用ペルソナを設計することで、採用したい人材が抱えている課題を具体的にイメージすることができます。「なぜ転職をしようと考えているのか?」、「何に悩みを感じているのか?」を知ること考えることができます。
例えば「今のスキルをより活かした仕事につきたいのか?」「家族と過ごす時間を増やすために転職を考えているのか?」「成長機会を求めて転職を考えているか?」などなど求職者視点で考えられるようになり、自社とマッチする求職者に対して効果的な訴求を行うことができるのです。

【メリット3】効率よく採用を進めることができる

採用活動には、現場の既存社員から経営者まで多くの人が関わります。そのため、「このような人材が欲しい」というイメージを社内で統一しておくことが、選考を進めていくうえでとても重要なポイントとなります。
明確な採用基準が設定できていなければ、面接において合否の判断をすることは難しいでしょう。また、個人の感覚で合否を行った場合、企業が求めている人物像からズレが生じてしまうといった可能性も少なくありません。
ペルソナ設計をすることで、社員間で採用したい人物像のズレや認識違いを防ぎ、スムーズな採用活動につなげることができるのです。

採用ペルソナの構成要素

それでは、ペルソナを説明するにあたってどのような項目があるのでしょうか?
それを説明します。

1.基本情報

年齢、学歴、性別、居住地、家族構成、年収といった、基本情報が採用ペルソナを構成している要素のひとつです。
たとえば、住んでいる場所、現在の年収は報酬設定に直結するので、採用ペルソナを設計する際に基本情報の設定は重要になります。

2.経験・スキル

経験やスキルは採用ペルソナを設計するうえで大切な要素です。
何をメインの業務にするのか、どの範囲まで仕事を任せるのか、によって必要な経験、スキルは変わります。
「想像していた業務と違う」とミスマッチを起こさないためにも、採用ペルソナを設計する際は、必要な経験とスキルを慎重に決めましょう。

3.価値観・マインド

年収やスキルが一致していても、価値観・マインドがずれていては、ミスマッチが発生します。
たとえば、「冒険心の強いベンチャー企業にもかかわらず、安定志向の求職者を採用してしまった」などです。
価値観・マインドも詳細に設定し、採用ペルソナを形成しましょう。

採用ペルソナの作り方

では、採用活動ではどのようにペルソナを設定すれば良いのでしょうか。ペルソナの作り方を具体的に見ていきましょう。

①ヒアリングからターゲット像とニーズを洗い出す
②ペルソナを整理する
③出来上がったペルソナを検証する
④実際の選考に活かす

①ヒアリングからターゲット像とニーズを洗い出す

ペルソナとは、単なる人物像ではなく経歴や行動、趣味や性格も含めた人格と定義されます。つまりペルソナは、自社の代表的な社員像と言い換えることができます。そしてペルソナの設定は、「ターゲット像」×「ニーズ」から検討を行います。

「ターゲット像」とは、今後自社に欲しい人材を具体化した人材要件です。また、「ニーズ」とは「なぜこの会社に入りたいのか」という志望理由を明確化したものです。

「ターゲット像」の定義は、経営陣と採用受け入れ部門の関係者に求めている人材のスキル、行動特性、性格などの資質をヒアリングします。この時に注意したいのが、自社の社風に合う人材はどのような人物像かを考えることです。どれだけ能力の高い人材を採用しても、社風に合わなければすぐに離職してしまいます。

そこで、自社の「できる人材」はどのような人材か、を経営陣や各部門のマネージャーにヒアリングしてみてください。実は、「この人はできる」という感覚は、各社各様に異なっています。この「できる人材」を言語化してターゲット像を決めることが、社風に合った人材の採用を成功させるポイントです。

ターゲット像が決まったら、次にターゲットの「ニーズ」を検討します。「ニーズ」を知るには、直近で入社した社員の入社理由をヒアリングしましょう。なぜ、入社したのか、その決め手は何だったのか、どんな問題を解決したくて入社したのかをヒアリングしましょう。すると、給料を上げたかった、サービスに魅力を感じた、など入社のトリガーとなったポイントが明らかになります。

このように、経営陣や部門、社員からヒアリングを行いながら「ターゲット像」と「ニーズ」を明確化していきます。

②ペルソナを整理する

ターゲット像とニーズが明確化したら、次に集めた情報をペルソナとして整理します。

ターゲット像からは、求めている人材の情報が明らかになっています。年齢、現在の職業、保有スキル、性格、学歴、国籍、性別などの属性情報がターゲット像の中心的な情報です。また、ニーズからは会社に求めることや仕事の価値観が明らかになるでしょう。こうした情報を一つの仮想的な「人格」として整理することで、ペルソナが完成します。

③出来上がったペルソナを検証する

ペルソナが出来上がったら、このペルソナが有効かどうか検証を行います。ペルソナに経営陣や各部署の従業員からフィードバックを受け、求める人物像とのズレを修正しましょう。

例えば法人営業職の採用であれば、以下のような例になります。

ペルソナの例(法人営業職)

・年齢:28歳
・学歴:福岡の中堅私大の情報工学系学部を卒業
・経歴:新卒で現在の会社に入社して5年目。昨年チームリーダーになった
・職業:食品会社の法人営業職
・年収:450万円程度
・最近の悩み:もともとマーケティング志望でまずは現場でということで営業をしている。
・仕事で大切にしていること:やりたい仕事ができること、長く働けること
・保有スキル:コミュニケーション能力、論理的思考
・保有資格:応用情報技術者

このようなペルソナを整理し、経営トップと現場間に認識がずれがないか確認しましょう。同時に、人事の視点から本当に市場に存在しうる人物像か検討することも重要です。求めている人物像が市場から調達できない場合は、社内で人材を育成することを検討するのも大切な視点です。

採用の目的は、事業に必要な人材を供給することです。ペルソナを作ることを目的化せず、必要な人材を供給するには他に別の選択肢がないか常に検討しましょう。

④実際の選考に活かす

次に設定したペルソナを基に選考方法や基準を見直しましょう。ペルソナは明確な採用基準となるため、主観や第一印象による採用を防ぐことが可能になります。

また、面接時にはペルソナを基にした適切な質問を行えます。希望の給与や待遇面など、ペルソナとリンクした質問ができれば自社が必要な人材かどうかを見極めやすいでしょう。

ペルソナの活用は、採用におけるミスマッチのリスク軽減につながります。

ペルソナ活用の注意点

ここまで、ペルソナについて設定と運用について書いてきました。ペルソナを活用するうえで、特に注意することはなんでしょうか。

ペルソナは1回作って終わりではない

ペルソナには市場と同様に流動性があります。企業戦略や市場動向に沿ってペルソナは設定されるのがよいです。一度設定したからとそのままにすることは避けましょう。

選考を重ねながら適宜ペルソナを見直し、ブラッシュアップを続けてください。ブラッシュアップしていくことで、現実味のある精度の高いペルソナへと変化していきます。

また、適切な人材を獲得できなかった場合もペルソナの見直しを行いましょう。自社の希望を押しつけたペルソナではないか、見直しにより問題点に気付くことができ、次回は現実的で効果的なペルソナを設定でき次に活かせます。

まとめ

採用で使用するペルソナを整理することは、自社に必要な人材を明確に定義することです。ペルソナを作る取り組み自体が、採用基準や採用する人材像の整理につながります。この一連の取り組みは採用活動上とても重要です。
ペルソナを採用活動における社内でのコミュニケーションツールとして使用することで、経営者や部門との間で自社の人材像を言語的に議論できます。
人材像を言語化することは、採用した人材の入社後の離職を防ぐことにもつながります。
適切なペルソナづくりに取り組み、採用活動を成功させましょう。