目次
- 内定を辞退させない方法は何?
内定辞退の発生率とその理由、防止策を解説 - 内定率と内定辞退率について
・新卒採用の内定辞退率
・中途採用における内定辞退率 - 内定を承諾した後の辞退理由
・内定後に他の企業から内定をもらった
・家庭の事情により入社困難に
・進路を変更した(進学または留年等) - 内定承諾後の辞退を防ぐための工夫と注意点について
・内定通知時の具体的な待遇や条件を書面で提示する
・迅速な選考手続き、より良い対応を心掛ける
・従業員と話す機会を設ける
・内定者を適切にサポートする
・オワハラ(就活終われハラスメント)に気を付ける - まとめ
内定を辞退させない方法は何?
内定辞退の発生率とその理由、防止策を解説
人材を募集する際、内定を出した後に応募者から辞退の申し出があると、企業側としては大きな打撃となります。特に内定を了承した後に辞退されると、再度採用活動を行う時間と労力が増えるため、混乱を招くことが多いでしょう。
しかし、残念ながら全ての内定辞退を防ぐことは難しいです。それでも、理解と対策を行うことにより、その数を大幅に減らすことは十分可能です。
新卒採用や中途採用での内定辞退の割合や、具体的な辞退の理由を基に、内定辞退や内定承諾後の辞退を避けるための具体的な対策を一緒に見ていきましょう。これらの情報を把握することで、企業としての採用活動をよりスムーズに進めることができます。
内定率と内定辞退率について
内定とは、就職を希望する方が企業の最終選考を通過し、その企業が採用を望むと示した状態を指します。これをさらに数値で表現したものが内定率で、これは就職希望者全体の中で企業から内定を受け取った人の数の比率を指します。
また、内定辞退という言葉も存在します。これは、就職希望者が内定を受けたにもかかわらず、それを受け入れずに辞退する事態を指します。そして、その辞退した人々の割合を示すのが内定辞退率です。
これらの言葉は、採用活動全体で使われることが多いですが、特に内定率は新卒採用の際によく用いられます。そのため、「就職内定率」という表現で呼ばれることもあります。
新卒採用の内定辞退率
この記事では、就職みらい研究所(株式会社リクルート)が実施した「就聒プロセス調査(2023年卒)」の調査結果を基に、新卒採用の内定辞退率について考えます。この調査結果は2023年の3月卒業予定者を対象としています。
就職内定辞退率(2023年卒)の具体的な数値は以下のURLの1ページ目の表をご覧ください。
画像出典:就職みらい研究所(就職プロセス調査(2023年卒)/就職内定辞退率)
この調査結果から明らかになったことは、2023年卒業予定者の就職内定辞退率が65.8%に達しているということです(3月卒業時点)。これを比較すると、2021年卒業者の内定辞退率は57.5%、2022年卒業者は61.1%でした。これらの数字から見て取れるのは、新卒採用の内定辞退率が年々増加傾向にあるという事実です。
中途採用における内定辞退率
「中途採用状況調査2023年版(2022年実績)」という調査が株式会社マイナビによって行われ、その結果によれば、2022年の中途採用における内定辞退率は7.9%だったとのこと。この結果を過去のデータと比較すると2021年は11.1%、2020年は15.7%と、中途採用の内定辞退率は年々減少しているという傾向が見て取れます。新卒採用とは違い、中途採用はこのように内定辞退率が下がり続けているのが特徴となっています。
以下に掲載するのは、中途採用内定辞退率(2022年)のデータを示した図です。
画像の出所は、株式会社マイナビが発表した「中途採用状況調査2023年版(2022年実績)/面接無断キャンセル率・内定辞退率」です。
ここで紹介した結果は、内定を受けた後にそれを辞退する人々の割合を示しています。ただし、ここでは内定を“受諾した後”に辞退する人々が多数いるというわけではないということを明確にしておきたいと思います。しかし、新卒の内定辞退率について調べると、3月の時点での辞退率は6割以上にも及びます。この数字の中には、内定を受け入れた後にそれを辞退する方々も一定の割合で含まれていると考えられます。
内定を承諾した後の辞退理由
採用活動は企業にとって、大きな時間と費用、尚且つ、多大な労力を必要とする重要なプロセスです。その結果として得られた内定者が内定を辞退するという事態は、企業にとって大きな痛手となります。
特に新卒採用の場合は、内定通知から入社までの期間が長いため、内定を出したからと言って、企業側が安心することはできません。その理由の一つとして、候補者が他の企業からの内定を受け入れる可能性があるからです。また、さらに困ったことに、内定を受諾した後に辞退をするというケースも、決してゼロではないのです。
そこで大問題となるのが、なぜ内定を受諾した後に、辞退をするのかという点です。この記事では、そうした内定辞退の理由について、よくあるケースを紹介しようと思います。
内定後に他の企業から内定をもらった
ある企業からの内定をすでに受諾した後で、他の会社からも内定が届くという状況は、採用では珍しくありません。例えば、「後から内定を貰った企業の方が待遇が良かった」「あきらめていた最優先の企業から内定が届いた」といった理由から、求職者が他の企業に引かれることがあります。
これらの状況は、求職者が一度はあなたの企業に魅力を感じ、内定を受け入れたという事実から、それなりにあなたの企業を評価していたと考えることができます。しかし、そうした魅力が途中で薄れ、他社の誘いに心が傾くことがあります。そのため、一度内定を受諾した求職者のモチベーションを維持、またはさらに高めるための対策が重要となります。
家庭の事情により入社困難に
家庭の問題は、どれだけ予防策を立てていても、回避が困難な退職理由と言えるでしょう。それは、内定者自身が予見できなかった事態であることが多いからです。
家庭の事情と一括りにすると、多種多様な状況が想定されます。そんな中でも、その特定の状況に柔軟に対応することで、辞退を防ぐことが可能なケースも存在します。
初めに、具体的な事情を把握することが重要です。入社を困難にしている要素を理解し、勤務地や勤務時間、入社時期などの調整が可能であれば、それを伝えることが大切です(調整可能な場合)。
また、問題を相談できる体制を整えておくことが必要となります。内定者が困難な状況に直面したときに、気軽に話せる関係性を築くことが、これらの問題を解決するのに非常に助けとなります。
進路を変更した(進学または留年等)
新卒採用において、内定を受け入れた後で進路を変更することは、内定辞退の一つの理由となり得ます。特に進学や留年といった要因が関与する場合、その年度については内定を辞退するしかない状況になることもあります。
しかしながら、そのような状況の中でも、インターンシップやアルバイトの提案を行うことは可能です。企業と学生との繋がりを維持することは、次年度以降の入社の可能性を高めるために大切なことです。そうすることで、中断した採用活動を再開しやすくなるのです。
内定承諾後の辞退を防ぐための工夫と注意点について
新しい人材を採用する際、内定を出した後にその候補者が辞退するというケースは、事業運営における大きな懸念事項となります。なぜなら、一度内定を出した後にそれを辞退されると、再度採用過程をやり直す手間が発生するだけでなく、企業のブランドイメージにも悪影響を及ぼす可能性があるからです。
このような事態を避けるためには、内定を受け取った後に辞退する候補者を引き留めることが重要です。ただし、これは容易なことではありません。なぜなら、一度内定を辞退すると決めた候補者を引き留めるのは難しく、多くの場合、時間と労力を無駄にする結果となります。
そこで、重要となるのが、選考の段階から応募者へのきめ細やかな気配りです。応募者が自分の将来をこの企業で描けるような情報を提供したり、選考過程での対応を丁寧に行うことで、応募者が自社を選ぶ理由を作り出すことができます。また、応募者のニーズを理解し、それに応えるような選考過程を設定することで、内定辞退を防ぐことが可能となります。
この記事では、内定辞退を防ぐための具体的な工夫と注意点について解説していきます。一つ一つのポイントを押さえ、適切な対応を行うことで、内定辞退という事態を未然に防ぐことができ、採用成功率を高めることが可能となります。
内定通知時の具体的な待遇や条件を書面で提示する
内定の受領者への信頼損失や不安感を引き起こす可能性があるのが、明確な待遇や条件の提示を省略し、内定の受諾意思を確認する行為です。口頭だけで伝え、そのまま意思確認を進めることも同じような結果につながる可能性があります。
内定受諾の意思を確認する前に、まず書面で具体的な条件を示し、その詳細について気兼ねなく問い合わせができるように伝えることが重要です。これにより、内定者は「うっかり承諾してしまった…」という後悔するような感覚ではなく、納得の上で内定を受け入れることが可能となり、これが内定辞退の防止に繋がります。
さらに、通知する労働条件は入社する際のものであるべきです。それに加えて、キャリア進行やスキル向上に伴う給与や待遇の変動についても説明できると、待遇や条件を重視する人々に対する魅力的なアピールとなるでしょう。
迅速な選考手続き、より良い対応を心掛ける
企業への印象は選考過程の対応によって大いに左右されます。このため、選考結果の検討は迅速に進めることが必要です。また、面接日程の調整や面接後のフォローアップも、単なる手続き的な作業にならないよう、個々の求職者に適した形で対応することが重要です。
高速な選考プロセスと優れた対応を通じて、企業が候補者を価値ある存在と見なし、その入社を心から歓迎していることを明確に示すことができます。このような選考過程における積極的なアプローチは、内定受諾後に辞退するケースを減らすための重要な施策となります。
従業員と話す機会を設ける
採用のプロセスは、決して面接だけで終わりではありません。採用に関与する人々、特に面接官でない従業員の参加が、採用成功の大きな要素となり得ます。
候補者と従業員の間で直接的な対話の機会を設けることは、候補者の疑問を解消し、不安を取り除く有効な手段となります。従業員から直接会社の魅力、仕事の内容、働く環境の良さを伝えることで、候補者にとっての企業の魅力をより具体的に理解することが可能となります。
さらに、共通の出身地や出身大学、希望する部署の先輩といった共通点を持つ従業員との会話は、候補者にとって自然で気楽な雰囲気を作り出すことができます。このような状況は、会話を活発にし、深めることが可能となります。これにより、候補者は企業とのより深いつながりを感じ、採用に至る可能性が高まるでしょう。
内定者を適切にサポートする
新たに入社が決まった候補者へのフォローアップは、その後の入社までの熱意や意欲に大きな影響を与えます。何もフォローアップがなければ、その候補者が最終的に入社を辞退する可能性が高まります。一方で、フォローアップが過度になると、その候補者にとっては負担になることもあります。
フォローアップの体制(誰が、いつ、どのようにフォローアップをするのか)は、事前にきちんと決定しておくことが重要です。そして、その状況に応じて柔軟に対応することができるようにしておくと良いでしょう。個々の候補者へのフォローアップはもちろん、内定者同士の交流を促すために内定者懇親会などのイベントを開催することも、候補者が入社を辞退することを防ぐ一助となります。
オワハラ(就活終われハラスメント)に気を付ける
「オワハラ」は、企業が自社に内定を出した学生に対して、早期に就職活動を終えるよう強いて、または他社からの内定を辞退するように促す行為を指します。
企業側からすれば、これは優秀な人材を自社に固定するための手段の一つとして捉えられているかもしれません。しかしながら、これは学生に対して無理なプレッシャーを与える行為であり、公正な雇用活動とは言えません。さらに、オワハラ行為は企業のブランドイメージを損なう結果を招くこともあります。
したがって、学生が内定を辞退しないように配慮することと、オワハラという不適切な行為との違いを明確に理解し、採用活動を進めていくことが必要です。
オワハラについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
「オワハラとは何か?人事・採用担当者が知っておくべき就活におけるハラスメント」