人材確保の3つの難しさと成功への4つのポイント

2023/08/03

ビジネスの成長や社員の退職といった状況により、企業は往々にして人材不足に直面します。このような場合、新たな人材を確保することが求められます。

しかしながら、現在の採用市場は、人手不足の影響で求職者有利の傾向が強まっており、ただ単に広告を出して採用活動を行うだけでは、理想とする人材からの応募が得られないばかりか、全体として応募者が集まりにくい状況に見舞われています。

そこで、本記事では、人材確保に苦労している経営者や人事担当者がどのように対処すればよいかを、成功に導く4つの重要なポイントを基に詳しく解説していきます。これらのポイントを理解することで、人材確保の課題を乗り越え、企業のさらなる成長を実現する基盤を築くことができるようになります。

目次

人材確保が困難な3つの原因について

人材確保が難しい原因はさまざまです。

社会情勢や若者の就業意識といった面から、なぜ人材確保が難しいのかみていきましょう。

少子高齢化の進行によって

日本は現在、少子高齢化という課題に直面しており、これが結果として労働力となる人材の数を減らしているのが現実です。

特に注目すべきは、1947年から1949年に生まれた第一次ベビーブーム世代、通称「団塊の世代」が次々と退職を迎えていることです。これにより、企業の労働力として活躍する人口がさらに減少しているのです。

内閣府が発表した「令和2年版高齢社会白書(全体版)」によれば、全国の総人口のうち65歳以上が占める割合は令和元年時点で28.4%に上っています。この高齢者の割合は、これからも増え続けると予想されています。

そして、その一方で15歳から64歳までの生産年齢人口は減少の一途をたどっています。この結果、企業が直面する人材不足という問題は、今後も続くことが見込まれています。

以上のような背景から、人材ビジネスが重要な役割を果たすことが求められています。

参考資料:1 高齢化の現状と将来像|令和2年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府

人材の流動化

かつての日本の企業文化は、終身雇用や年功序列といった制度が一般的で、一つの会社に新卒で入社し、そのまま定年まで働き続けるというパターンがよく見られました。

しかしながら、現在では終身雇用を採用している企業はほんの一部に過ぎず、「成果主義」を採用する企業が増えてきています。年齢に関わらず、仕事の能力を持つ人を評価することが一般的になりつつあります。

長い年月をかけて人生の経験を重ねた先輩社員よりも、学習意欲が旺盛で前向きな意欲を持つ社員の方が企業からの評価が高まり、従来の年功序列に基づく出世ではなく、勤務年数に関係なく仕事の能力を持つ社員を昇進させる傾向が増えています。

このため、大手企業に対してブランド力の劣る中小企業では、優秀な人材の流出、すなわち、転職や再就職といった形での人材の流動化が進行しています。これは、企業の成長や競争力の維持にとって大きな課題となっています。

若者達の大手企業志向の高まり

近年、社会はバブル崩壊やリーマンショック、新型コロナウイルスの流行といった予測不能な状況が続いています。このような不安定な環境下で、若い世代の中で大企業への志向が増しているという報告が寄せられています。

具体的には、株式会社マイナビが実施した「2021年卒大学生就職意識調査」において、2021年卒の大学生のうち、「大手企業志向」の学生が55.1%となっており、前年と比較して2.4ポイント増加しています。

さらに、同じ調査結果からは、就職先を選ぶ際の重視ポイントとして「安定している会社」を挙げた学生が最も多いという結果が明らかになりました。

このような学生の傾向から、安定性を重視して大手企業を志望する学生が増えていることが観察されます。これにより、中小企業における人材獲得がさらに困難になる可能性も考えられます。この現象は、中小企業の人材確保戦略に大きな影響を与える可能性があります。

人材確保が失敗に終わる主な3つの理由

現在の採用市場は、多様な要素によってその状況が左右されています。社会問題や求職者の就職先に対する志向など、これらの要素が絡み合うことで、企業側が質の高い人材を確保することが日増しに難しくなっています。このような現状を把握した上で、企業はどのように対策を練り、効果的な人材確保を行っていけば良いのでしょうか。この問いに対する一部の答えが、以下に紹介する3つの人材確保に失敗する原因に隠されています。これらを理解し、改善策を見つけることで、企業は人材確保の難しさを少しでも克服できるでしょう。

適した募集方法を採用していない

企業が人材募集を行っているのにも関わらず、求職者からの申し込みが少ない場合、その原因として募集手法が最適でない可能性が検討されます。

もし一度募集を実施して求職者が集まらなかったとしても、その後も同様の求人広告を使い続けることがあるかもしれません。もちろん、新しいプラットフォームを使うことで、より多くの人々の目に触れる機会が増えるかもしれません。しかし、求人内容が魅力的でなければ、応募数を増やすことは難しいと言えるでしょう。

仕事の性質や給与制度、福利厚生などの情報が明瞭に記載されているか、募集対象を適度な範囲に設定しているか、会社のイメージをうまく伝える内容が盛り込まれているかなど、求人募集を出す前に、求人原稿を再評価する必要性があります。

多くの求職者は、企業の情報をウェブサイトや口コミサイトで事前にリサーチし、その上で応募を決定する傾向があります。したがって、自社のウェブサイトが存在しない場合、それが応募数の減少につながる可能性があります。

インターネットで企業名を調べても何も情報が見つからないと、求職者は企業に対する安心感や信頼感を得ることが難しく、それが結果的に応募しづらい状況を生み出す可能性があります。

採用基準があいまい

企業が新たな人材を採用する際には、「どの程度の専門知識やスキルをその人材が持っているべきなのか」「どのような性格を持った人材が企業の文化にフィットするのか」などの採用基準が明確であることが重要です。しかし、これらの基準が不明瞭だと、選考過程で企業と候補者がマッチするかどうかを適切に判断することが難しくなります。そして、その結果として、入社後に企業と新入社員の間で期待値のズレが生じ、早期退職に繋がる可能性があるのです。

さらに、企業が採用基準をはっきりと表示していなければ、求職者自身が「自分はこの企業の要件に合致しない」と判断し、最初から応募しないという選択をすることもあります。

このように、「自社がどのような人材を求めているのか」という採用基準を明確にすることは、採用品質を向上させるだけでなく、求職者からの応募を促す効果も期待できます。そのため、企業としては採用基準の明確化を心がけるべきです。

会社の魅力を充分にアピールできていない

自身の企業の業務内容やその魅力を十分に伝える機会が不足していると、求職者は企業に対する理解が深まらず、応募の意欲を失ってしまうことがあります。

さらに自社のウェブサイトやその他の情報発信チャネルが存在する場合でも、その内容が時折更新されていなかったり、求職者が必要としている情報が掲載されていなかったりすると、企業の運営や管理の不十分さを感じ取られ、求職者にとっては否応なく悪い印象を与えてしまうでしょう。

企業が実施している業務内容や、その魅力が何であるかといった情報をオープンにし、企業の認知度を向上させるような戦略を立てることは、人材採用活動の一環となります。求職者があなたの企業を理解しやすくなる内容の発信を心がけてみましょう。

すぐに実践!成功へ導く人材確保の4つのポイント

人材の確保が難しいと感じる原因は多岐にわたります。それは採用手法の不適切さや情報の発信方法の問題など、様々な要素が絡み合っていることが多いのです。このような課題を乗り越えるためには、どのようなアプローチが有効なのでしょうか?

次に、難航している人材確保の改善策を見つけ出すための、成功への道標となる4つのポイントを一緒に見ていきましょう。これらのポイントを理解し、適切に活用することで、採用活動の成功に一歩近づけることができるでしょう。

分かりやすく求人情報を掲載する

人材を確実に採用したいと考える企業にとって、求人情報を明確でわかりやすく伝えることは成功への重要なステップとなります。

求職者が求人情報を初めて目にした瞬間、すぐに自身がその職場で働いている姿を思い描けるようにすることが大切です。そのためには、「企業が具体的に何を求めているのか」「具体的にどのような業務を担当するのか」など、自社の情報を詳細かつ親しみやすく明示することが求められます。

例を挙げますと、システムエンジニアの求人情報であれば、「取引先の業種は何か」「使用するプログラミング言語は何か」「開発の規模はどれぐらいか」などの情報を求職者に対して明確に伝えることが重要となります。

求人情報を明確かつわかりやすく伝えることで、求職者からの応募が増えるだけでなく、企業と求職者の間で期待値の不一致や誤解が生じるリスクも低減されます。これが、人材採用を成功に導くための一環となるのです。

働きやすい環境にする

近年、働き方改革の広がりや新型コロナウイルスの蔓延により、今後もっとも求められることは、勤務日数、労働時間、勤務場所などの多様性となるでしょう。

これらの変化に対応して、「短時間勤務」「勤務地の自由化」「副業の推奨」など、柔軟な働き方を提供できる企業が、求職者にとって特に魅力的となります。

柔軟な働き方を実現できる制度を持つ企業は、社員からも魅力的と感じられやすく、働き手のニーズが高まっています。そのため、社員の意見を取り入れつつ、制度の見直しや新たな制度の導入を考えることで、人材の確保につながる可能性が高まります。

離職率を低下させる

離職率とは、特定の期間内に退職する従業員の数を全従業員数で割った数値で、それは企業の健康度を表す重要な指標となります。

この離職率が高いという事実は、従業員が何らかの理由でその職場で働くことが難しい、という状況を暗示しています。一方、離職率が低いということは、その企業が働くに適した環境を提供していることを示します。

離職率が高い企業は、求職者から見ると問題を抱えているというネガティブなイメージを持つ可能性があります。これは企業にとっては好ましくない状況であり、その原因を探り問題解決に取り組む必要があります。

「残業が多い」「企業の将来性が見えない」「自己成長の機会が少ない」といった理由が離職率の上昇を招いていると分かった場合、それらの問題を解決すれば、離職率は自然と下がり、企業は求職者から見て魅力的な存在になり得るのです。

そのため、企業としては「従業員が何を考えているのか」「彼らが何に不安や疑問を感じているのか」を理解するために、社員とのコミュニケーションを深め、抱えている問題を明らかにすることが重要です。このような努力を通じて、企業は離職率を下げることができるでしょう。

成長の機会を提供する

優秀な人材というのは、自己成長の可能性を追求する傾向にあります。彼らは、自己を高め、スキルを磨くことができる環境を望んでいます。そのため、採用する際には、その人が自身の成長を実現できる環境を提供できるかどうかが、重要なポイントとなります。

会社にとっても、従業員のスキルアップは極めて重要です。それは、優秀な人材の確保という視点だけでなく、その結果として会社の利益にも直結するからです。

一方で、会社が明確なキャリアパスを示せない状況では、社員は将来に対する不安を抱くことがあります。それが退職につながることもあります。

したがって、昇進の道筋や賃金体系を明確に示し、わかりやすく図式化することが求められます。また、管理職への昇進だけでなく、優秀な技術者や営業職としての道も提示することで、様々なキャリアパスを用意することも必要となります。これにより、社員が成長できる場をしっかりと設けることができます。"

人材確保成功のため利用したい!多彩なサービス

優れた人材を確保することは、ビジネス成長のために重要な要素の一つです。そのためには、タイムリーな対応や内定者への迅速なフォローアップなど、様々なアプローチが求められます。しかし、これらは手間と時間を要する作業であり、特に中小企業やスタートアップでは人手が足りないことが多いです。

こうした課題を解決するために、人材採用に関する様々なサービスが提供されています。これらのサービスを活用することで、採用業務の効率化を図ることができます。これから、人材確保に役立つ各種サービスを一緒に見ていきましょう。

採用管理システム利用

採用管理システム、別名「ATS」(Applicant Tracking Systemの略)は、人材採用に関わる業務の一元的な管理と効率化を果たすためのシステムです。求人の公開、応募の受付、候補者とのコミュニケーション、プロセスの進行状況の追跡など、採用業務全てをこのシステムが取り扱います。

これにより、複数の求人情報を一括で作成したり、候補者の履歴情報や採用進行中の詳細を一元的に管理することが可能となります。これは、採用に関わる情報を一箇所で把握できることを意味し、情報の管理が大幅に容易になります。

加えて、「どの採用経路から応募してきた候補者が最終的に採用に至るのか」などのデータを収集し、分析することも可能です。これにより、採用活動の効率化を図ることができ、より良い採用結果につながる可能性があります。

また、採用管理システムを活用することで、採用に関する情報を全社で共有することが可能となります。その結果、情報が特定の人間に依存することなく、スムーズな情報共有が可能となります。これにより、組織全体の採用活動の透明性を高め、より効率的な運用が期待できます。

ハローワークの活用

ハローワークとは、その正式名称を公共職業安定所といい、主に職業を紹介する役割を果たす行政機関のことを指します。

民間企業が運営する通常の転職エージェントとは異なり、ハローワークを利用する求職者に対しては一切の費用が発生しないだけでなく、人材を探している企業に対しても無料でサービスを提供しているという特徴があります。

厚生労働省が管理・運営していることから信頼性が高く、またシステムが更新されインターネットでの求人掲載にも対応しているというメリットも存在します。

さらに、ハローワークでは多様な経歴を持つ求職者が求人情報を閲覧しています。そのため、企業側からすれば予想外のスキルや能力を持つ人材を見つける可能性が広がります。これらの特徴から、ハローワークは求人・求職の両方にとって非常に有用なツールと言えるでしょう。

他にもあるさまざまなサービス

転職サービスと聞くと、「マイナビ」「Indeed」のような大手のウェブサイトがまず頭に浮かびます。しかし、これらの一般的なサービスだけでなく、歯科衛生士やシステムエンジニアのような特定の職種に焦点を当てた採用サイトを活用することも、人材を探す上で非常に有効な手段となります。

企業が求める人材のスキルや業務経験が明確に定義されている場合、業種特化型の採用サイトを活用することで、その条件にピッタリ合った人材からの応募が見込めるのです。

さらに、人材紹介や人材派遣サービスも非常に役立ちます。突然の人手不足が発生した際でも、迅速に適切な人材を確保できるため、多くの企業がこのようなサービスと契約しています。業界やポジションによって異なるニーズにも対応できるので、事業の安定性を高めるための備えとしても有効です。

人材紹介や人材派遣サービスを利用すると、専門の担当者が採用プロセスをサポートするため、企業側の採用にかかる手間や時間を大幅に削減できる可能性もあります。これらのサービスは、広範な人材ビジネスにおける多様なニーズに対応するための強力なツールとなり得るのです。

よりよい人材確保のためにやっておくべき3つのこと

個々の組織が直面する人材確保の課題に対策は多数存在します。しかしながら、その一歩先を見据えた行動により、真に優れた人材を獲得する可能性が高まります。

より質の高い人材を得るために、どのような行動をとるべきか、具体的な3つの手法を探求してまいりましょう。

応募を促す魅力的な企業への変革

求職者が一目で「ここに応募したい!」と感じるような企業になるためには、その企業文化や評価制度、福利厚生が充実していることが不可欠です。

求職者が企業を魅力的に感じる要素は人それぞれで、一部の人々は福利厚生の充実度やキャリアアップの可能性を重視する一方、他の人々は企業の事業内容や仕事内容そのものに魅力を感じるかもしれません。

このような多様な求職者の視点から見て、自社が引き立つようにするためには、他の競合企業と比較して福利厚生やキャリアプランの整備に力を入れることが有効と考えられます。

また、福利厚生やキャリアプランを見直すだけでなく、自社の社員が働きやすい環境を整えることも重要です。例えば、フレックスタイム制度やリフレッシュ休暇の導入といった工夫をすることで、社員の満足度を高めることができます。

これらの福利厚生や働きやすさの改善は、社員の満足度を高めるだけでなく、求職者に対しても自社の魅力を伝えるうえで大いに役立ちます。

企業として求職者に「ここで働きたい」と思わせるためには、競合他社との比較や、自社の社員からのフィードバックを基に、自社の強みや改善点を多角的に分析し、改善策を実行に移すことが求められます。

競合他社の募集要項を確認する

帝国データバンクが2017年に発表した調査結果によれば、驚くことに7割以上の企業が、人材獲得の施策として競合他社の採用戦略を観察・参考にしていることが明らかとなりました。

これは、賃金構造の改善や勤務体制の充実等の応募条件を見直すだけでなく、人材紹介会社の活用や求人広告の出稿といった採用手段についても、他社の試みを学び、そのヒントを自社の戦略に反映させていることを指しています。

他社との競争で優位に立つためには、自社の採用活動が他社のものとどのように異なるのか、それを明らかにすることが必要です。そしてその違いを理解し、必要な改善を行うことが、成功の鍵となります。

そして、これは応募条件だけでなく、求人広告の内容にも当てはまります。広告のタイトルや、キャッチコピー等の文章部分においても、他社がどのような言葉を選んで求職者にアピールしているのかを細かく分析し、その結果を自社の広告作りに活かすことが重要となります。

評価制度とキャリアパスの見直し

もしも社員が仕事に対する情熱を保ちつつ、自身のキャリアを描くことができないと感じている場合、その結果として将来への不安から職場を離れる可能性が高まるかもしれません。

「これだけの成果を達成すれば、あのレベルまで評価され、昇進も見込める」という具体的な目標を示すためにも、人事評価制度の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。

人事評価を改善する際には、達成した成果に対して十分な昇給や昇格の機会を提供することも重要です。しかし、それと同時に、仕事の達成感や充実感を求めている社員もいるため、社員が何を一番大切にしているのかを把握することも大切です。

また、優秀な女性社員が結婚や出産をきっかけに職を辞めてしまう場合には、産前産後の休暇制度や育児休暇の充実をはかること、そして育休から復帰した際にキャリアの相談をしたりと、復職支援の強化も考えるべきです。

まとめ

社会的な課題や求職者の就職観念の変化により、雇用市場は労働者有利の状態が続き、資質のある人材を見つけることが一層難しくなっています。

このような状況下では、求職者や競合他社の動向を深く理解し、より多くの応募者を獲得するための戦略を策定するだけでは不十分です。それと同時に、採用後の職員が早期に退職しないよう、採用のミスマッチを防ぐことも大切な課題となっています。

この記事があなたの参考になり、人材採用のアプローチを再評価し、最適化するきっかけとなれば幸いです。