「求人を出しても、思うような応募者が集まらない」「採用したいと思う理想の人材と、実際の応募者の間に大きなギャップがある」このような採用の課題に直面している人事担当者は少なくないでしょう。
人事担当者が担当する採用活動は、企業の売上や業績、更には企業の将来に直接影響を与える非常に重要な業務です。採用がうまくいかないと、企業全体の労働力不足に繋がり、そこから様々な問題が生じてしまいます。
そんな採用に悩む企業のために、今回の記事では、求人に応募してくる人が少ない、あるいは理想の人材が集まらない企業に見られる特徴と、その解決策を詳しく解説します。
目次
- 採用における人手不足の現状
・人手不足感じている会社は増加している
・人手不足が深刻な業界・職種 - 人々が集まらない会社の3つの特徴
①採用活動に予算と人材を充分割り当てていない
②求人内容が魅力的でない
③採用手法や求人媒体があっていない - 採人が集まらない時の対策5つ
①ターゲットの明確化
②シンプルかつ具体的な求人内容にする
③適切な採用手法と求人媒体の選択
④求職者の動向に合わせた採用手法のアップデートを行う
⑤定期的に採用活動を振り返る - まとめ
採用における人手不足の現状
「人手不足」という言葉は、業務を遂行したいけれども、適切な人材が不足していて事業の拡大や継続が難しいという状況を表現しています。
この状況は、例えば、製造業やサービス業などの需要は存在しているのに、十分な人材が確保できずに供給が追いつかないというケースや、一人ひとりの従業員の仕事の負荷が増えすぎて、彼らが退職を考えるようになるといった事態を指します。
これらの人材不足が継続的に起こると、企業の事業運営が困難になり、最悪の場合、企業が倒産へと繋がる可能性もあります。
そのため、企業の持続的な成長と安定した事業運営のためには、人材不足の問題は必ず解決しなければならない課題となっています。
人材不足の問題を解決するための具体的な対策を立てるには、まず、人材が不足する原因や、特に人材不足が深刻な業界や業種について理解することが第一歩となります。
人手不足感じている会社は増加している
新型コロナウイルスの影響が始まった2020年以降、多くの事業者は従業員の休業を余儀なくされたり、採用活動を自粛したりするなど、採用を控えていました。
しかし一方で、医療、小売、物流など、我々の生活を支える重要な職種、いわゆるエッセンシャルワーカーについては、従業員を増やす必要がある一方で人材が足りていないという問題が深刻化しています。
特に医療現場では、新型コロナウイルスの拡散に伴い業績が増大し、物流業界ではEC(電子商取引)の急増や行動制限による配送ニーズの拡大に対応しきれない状況が続いています。
また、小売業界でも、人々の生活を維持するために外出自粛期間中でも働くことが求められ、仕事へのニーズが増大したと言えます。
このような働き方の大きな変化が社会全体に起こった結果、人手不足問題はさらに深刻化しています。
新型コロナウイルスの流行がきっかけとなり、リモートワークや副業、時短勤務など、多様な働き方への対応が求められるようになりました。今後、求職者から見て「柔軟な働き方ができる企業」かどうかが重要な判断材料となることでしょう。
全ての働き方に対応するのは容易なことではありませんが、改善できる部分から着実に進めていくことで、人手不足問題の解決に繋がり、人材を確保するための一歩となることでしょう。
人手不足が深刻な業界・職種
国の厚生労働省の調査結果から、2009年以降、人手が足りないと感じている企業が増えつつあるという現状が明らかになってきました。
この状況は、経済がリーマンショック後に回復傾向にある中で、働き手を増やす動きを見せる企業が一部存在し始めた2009年から顕著になってきています。
そして、現在の2022年2月においては、どの業界や職種で人手不足が深刻化しているかを考察することが重要となっています。
そこで注目すべき指標が求人倍率です。これは、「求人数と求職者数を集計し、求人数を求職者数で割って算出した値」で、求人倍率が高ければ高いほど、その業界や職種が人手不足であることを示します。
具体的には、求職者一人に対する求人が一つであれば求人倍率は1倍となります。そして、求人数が求職者数を上回ると求人倍率は1倍を超え、一人の求職者を複数の企業が争う、いわゆる人材不足の状態を反映します。
そんな中、2022年2月時点で求人倍率が高いとされる業界・職種は以下の通りです。
《人手不足が顕著な職種・業界(2022年2月時点)》
1位:建設躯体工事の職業(求人倍率:8.95倍)
2位:保安の職業(求人倍率:7.11倍)
3位:建築・土木・測量技術者(求人倍率:5.88倍)
4位:採掘の職業(求人倍率:5.87倍)
5位:土木の職業(求人倍率:5.53倍)
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況」
また、同じ時期の求人数が多い業界・職種を見てみると、介護職がトップに立っています。高齢化社会を迎えた日本では、介護職の人材不足は常態化しており、介護サービスの需要と供給のバランスが崩れていることが伺えます。
《求人が豊富な業界・職種(2022年2月時点)》
1位:介護サービスの職業(求人件数:21万5748件、求人倍率:4.30倍)
2位:一般事務の職業(求人件数:17万5274件、求人倍率:0.45倍)
3位:商品販売の職業(求人件数:16万4390件、求人倍率:2.54倍)
4位:飲食物調理の職業(求人件数:13万6850件、求人倍率:3.17倍)
5位:社会福祉の専門的職業(求人件数:13万4338件、求人倍率:3.52倍)
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況」
人々が集まらない会社の3つの特徴
人がなかなか集まらない企業というのは、その背後に3つの特徴が存在していることが多いのです。これらの特徴を把握し、理解することが、人材が集まりにくい状況から脱出し、人が集まる会社へと進化するための第一歩となります。
以下では、「人が集まらない会社の特徴」を3つ具体的に解説します。
①採用活動に予算と人材を充分割り当てていない
採用活動は、企業にとって重要なプロセスであり、それには多大な時間と人員の投入が必要となります。
大企業では専門の採用部門が設けられ、必要な資源と人材が確保されています。しかし、中小企業においては、採用業務を担当する者が他の業務も同時に進行しなければならないことが多く、その結果、採用活動に十分な時間を割くことが難しいという現実があります。
専任の採用業務担当者がいる場合、その人は採用活動に全力を傾けることができます。これは彼らが専門家であり、その業務に専念することが求められているからです。
一方、兼任の採用業務担当者にとっては、多岐にわたる業務をバランス良くこなしながら、採用活動にも尽力しなければならないため、その負担は大きいです。これにより採用活動に十分な時間を割くことができず、結果的に採用の質に影響を及ぼす可能性があります。
このように、専任と兼任の採用担当者では、採用活動に投入できる時間とエネルギーに大きな差が生まれ、それが採用の成果に直結します。
この問題を解決するためには、中小企業でも採用業務を全社的に捉え、それぞれが一定の役割を果たすことが求められます。
「人手不足だから採用が難しい」と単純に考えるのではなく、自社の採用活動に対する投資と人材配置を再評価してみてはいかがでしょうか。人材は企業の成長を支える重要な要素です。だからこそ、その採用には適切なリソースの配分が必要となります。
②求人内容が魅力的でない
現在、求職者は自分のキャリアを切り開くために、自分が働く場所を選ぶ際には、待遇や働き方などがより良い環境であることを重視しています。彼らが就労する先は、彼らの生活を豊かにするための場であり、ただ働くだけの場所ではありません。
採用活動が成功するか否かは、自社の魅力がどれだけ多くの求職者に伝わるかによって決まります。自社の特長や利点をうまくアピールできなければ、求職者が集まることは難しいでしょう。それがどれほど魅力的な企業であったとしても、その事実を伝えることができなければ、その魅力は霧消してしまいます。
したがって、自社の特長や利点を再評価し、その魅力を最大限に引き出せる方法を見つけることが求められます。自社の働きやすさやユニークな文化、社会的な価値など、アピールできるポイントを再発見することが重要です。
現代の求職者はワークライフバランスを重視する傾向にありますし、リモートワークやフレキシブルな働き方を望む人も少なくありません。そのような求職者に対して自社が多様な働き方を提供しているとアピールすることで、他社との差別化が図れるでしょう。
また、自社と同業の他社とを比較し、自社の強みと弱みを明確に理解することも大切です。これにより、自社が他社と比べてどの部分で優れているのか、または改善が必要なのかを把握でき、より効果的な採用戦略を計画することが可能になります。
③採用手法や求人媒体があっていない
求人媒体とは、求職者と企業を結びつけるための情報発信ツールで、その種類は地域や年齢、性別、業界、職種、目標とする人々などによって変わります。
求人媒体は、その利用者の層が媒体ごとに異なるため、企業が希望する求職者の層と求人媒体がマッチしていない場合、目指している層にメッセージが届かず、結果として求人情報が見られない可能性があります。
求人を掲載する媒体は様々で、一つの媒体だけを使用したとしても、必ずしも求職者が集まるわけではありません。求人媒体選びは、企業の求める人材とマッチするものを選ぶことが重要です。
また、これまで試したことのないSNSや社員の紹介など、新たな採用手法を試してみることも有効です。これらの手法を組み合わせて、自社に最適な採用法を見つけることが求められます。実際には、最適な採用手法や求人媒体は、企業の規模や業界、求める人材の種類などによって異なるため、自社のニーズに合わせて適切な方法を見つけることが重要です。
人が集まらない時の対策5つ
企業運営において、採用活動は常に刻々と変化する市場環境に適応する必要があります。しかし、採用方法を改良し、リファインしてもなお、人材不足が解消されないという難題に直面している企業も少なくありません。
このような厳しい状況下で、自社の採用方法や求人媒体の見直しは、避けては通れない課題となります。その理由としては、求職者のニーズは時代と共に変化し、昔ながらの採用手法や求人媒体が現在の市場条件にマッチしなくなっている可能性があるからです。
そこで、これからは人材を引き寄せるための具体的な対処法を5つご紹介いたします。これらの方法を試し、自社の採用活動に新たな風を吹き込むことで、人材不足の問題解決に一歩近づくことができるでしょう。
①ターゲットの明確化
企業が求める新たな人材について、その対象となる候補者の層を明確に理解し定義することが、採用活動を成功へと導く重要な要素となります。
たとえば、ある企業が主婦層を新たな採用のターゲットと定めたとすると、その主婦層の中でも具体的な人物像を理解することが重要です。例えば、小さなお子さんがいて日々の育児に追われている主婦と、すでにお子さんが成長し、日々の生活に多くの時間を持て余している主婦では、働き方に対する期待や求める条件は大きく異なるでしょう。
このように、採用したいターゲットとなる人物像を深く分析し、その特性を明らかにすることで、適切な求人媒体の選択や、最適な採用方法の策定が可能となります。
採用したい人物像がまだ明確でない場合は、現在自社で活躍している従業員を参考にしてみることも有効です。自社の職員の特性や働き方を理解することで、求める新たな人材の像が浮かび上がるかもしれません。このような試みを通じて、採用の成功に繋がる人物像の明確化を図りましょう。
②シンプルかつ具体的な求人内容にする
採用を行う際、求人広告に様々なスキルや特性、条件を詳細に書きすぎると、内容が散らかってしまい、企業が具体的に何の人材を求めているのかを理解するのが難しい状況になります。
実際に職場で行う業務内容を具体的に明記することで、求職者は「自分がこの会社で活躍できるのか」「自分が未経験でも挑戦できる仕事なのか」を判断しやすくなります。
企業から見て求職者に対する採用条件が過度に厳しく設定されていると、応募を考えていた人々にとって応募のハードルが高くなり、結果的に応募をためらってしまう人が増える可能性があります。
そのため、「採用条件が厳しすぎていないか」「情報がシンプルでわかりやすくなっているか」を、求人広告を公開する前に再度見直すことを強くお勧めします。これにより、企業が求める人材の理解が深まり、適切な応募者が増えることでしょう。
③適切な採用手法と求人媒体の選択る
採用成功の鍵は、自社が探している理想の候補者像と、求人情報を掲載する媒体がピッタリと合致しているかどうかにかかっています。
地域特化型の媒体、若者に人気のある媒体、経験豊富な高スキルな専門家を対象にした媒体、特定の職種専門の媒体、女性の転職支援に強い媒体など、多種多様な求人媒体が存在します。求職者はこうした各媒体の評判や口コミをチェックし、その情報をもとに応募する企業を選んでいます。
求人検索エンジンのIndeedや、SNSを駆使した新しい形の採用活動など、採用手法・求人媒体は多岐に渡ります。これらをうまく活用し、自社に最適な求人媒体を見つけ出すことが、採用活動を成功に導くための重要なステップと言えるでしょう。
④求職者の動向に合わせた採用手法のアップデートを行う
新型コロナウイルスの影響により、企業の人事部門は未曾有の変化を経験しました。その中でも、採用活動の進行方法は大幅に変わり、その影響は無視できません。
従来の面接形式からオンラインによるものへとスイッチし、求人に対する応募から面接、そして最終的な採用までのプロセスがデジタル化されました。これは、Web会議ツールを利用した面接が主流となりつつある現状を示しています。
このような変化の中で、求職者が企業から求めるものも日々進化してきています。これは、企業が新たな採用手法を導入することが求められていることを示しています。時代の変化に対応するための新たな採用手法の導入は、リクルートメントの成功に欠かせない要素となっています。それは、企業が競争力を保つためには、求職者のニーズに応えるためのアップデートが不可欠求であることを示しています。
⑤定期的に採用活動を振り返る
採用活動は成功したときも、そうでないときも、その結果をしっかりと反省し、評価することが重要です。なぜなら、この作業が企業の採用力を向上させるための鍵となるからです。
採用活動が計画通りに進まなかった時、その背後にある原因を正確に理解し、分析することで、次回に活かすことができます。これにより、同じ失敗を繰り返すことなく、採用力を一歩ずつ上げていくことができるでしょう。
例えば、求人情報の閲覧数やクリック数など、求人広告の反応を示す客観的なデータを用いて、何がうまくいったのか、何がうまくいかなかったのかを理解することが求められます。これらのデータを元に、定期的に採用活動を見直すことで、より効果的な採用戦略を練り上げることができるでしょう。
まとめ
これまでの記事では、人材が集まらない企業の特徴や、人材不足に苦しむ企業の現象について説明してきました。
全ての問題を一度に解決することは困難かもしれませんが、まずは手がつけられる部分から始めてみてはいかがでしょうか。少しずつ改善を重ねることで、大きな成果に結びつくことでしょう。
採用活動が思うように進まない、とお悩みの採用担当者様へ、この記事が少しでも参考になり、自社の採用活動に役立てていただければ幸いです。
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