近年、介護職の有効求人倍率は3倍を超え、採用の難易度が増しています。(出典:厚生労働省)というデータがこの状況を物語っています。この厚生労働省の統計情報からも明らかなように、介護職の採用は困難な状況にあります。
我々が以前に作成した「介護業界が直面する人材不足の解決に向けた4つの採用ポイント」にも触れていますが、介護業界での採用活動においては、「無駄を省き、効率良く」進めることが肝心です。
この記事では、介護職の現状を踏まえ、求人方法や応募者を集めるための戦略に焦点を当てて、成功のためのポイントを深堀していきます。
目次
- 介護職員採用に効果的な求人手法
●求人サイトを使った募集
●人材紹介の活用
●介護職における需要増 - 介護職員の採用困難な理由
●介護職務の採用が難しい主要な3つの要因
給与の低さについて
●ネガティブな印象について
●有給休暇の取得の難しさ
●介護職採用の前の準備事項
●詳細な採用計画の策定
●労働環境・福利厚生・待遇の向上
●職場環境の改善への取り組み - 介護職員採用成功の重要ポイント
●応募が集まる求人募集のポイントを伝授
求人内容を魅力的にする手法
●多数の方々にPR方法を探求する
●写真の撮り方と見せ方の工夫法
●採用プロセスのエンターテインメント化を意識する
●介護職員の採用成功実例 - 結論とまとめ
介護職員採用に効果的な求人手法
求人サイトを使った募集
Indeed
Indeedとは、あらゆる求人情報を探すことができる専門の検索エンジン(求人検索エンジン)です。このサイトを利用すると、求職者は「職種」や「勤務地」などの具体的なキーワードを用いて、自分に最適な求人情報を見つけ出すことができます。
Indeedの大きな特徴として、求人情報の掲載が無料でできる点があります。ただし、この無料掲載は新着情報順に表示されるため、時間が過ぎると見られる機会が減少してしまいます。そのため、有料オプションを利用して、自社の求人情報がより多くの求職者に見てもらえるようにすることもおすすめです。
また、Indeedの有料掲載の場合、求人情報がクリックされた回数分だけ広告費が発生します。そのため、採用コストを効率的に抑えることが可能です。
介護職専門の求人媒体
介護職に特化した求人媒体の利用も検討する価値があります。このような媒体は登録者の大半が介護や福祉関連の人材であるため、ターゲットとする人材に直接的に求人情報を届けることができます。
求人媒体の掲載費用は、掲載課金型と成功報酬型の2つのモデルに大きく分けられます。テレビのCMなどでよく見かける大手求人サイトは、主に掲載課金型を採用しています。それぞれのモデルにはメリットとデメリットがあるため、自社の採用状況に応じて適切なモデルを選択することが重要です。
掲載課金型のメリットとしては、一定の求人掲載料金(約10万~20万円程度)を支払うだけで、どれだけ人材を採用しても追加の料金は発生しない点が挙げられます。また、大手求人サイトは多くの人々からのアクセスがあるため、集客力が高いとも言えます。
一方、掲載課金型のデメリットとしては、採用ができなかった場合でも掲載料金が発生してしまう点があります。また、求人情報が検索結果の上位に表示されるなどのオプションは追加料金が必要となるため、オプションを利用しないと求人の閲覧回数が減少する可能性があります。
成功報酬型のメリットは、求職者の応募や採用が成功しなければ費用が発生しない点です。しかし、このモデルのデメリットとしては、一人当たりの採用単価が高くなる可能性があることを覚えておく必要があります。
人材紹介の活用
採用プロセスの中で、企業と応募者間にマッチングのズレが生じてしまうことがあります。そんな時、企業側としては人材紹介サービスの活用を検討することを強く推奨します。
<人材紹介サービスの利点>
1つ目のメリットは、質の高い人材を見つける機会が増えることです。人材紹介会社は、特定の業界や職種に精通していることが多く、そのネットワークを活かして企業が求めるスキルや経験を持つ人材を紹介します。
2つ目のメリットは、採用担当者の業務負荷を軽減することができる点です。人材紹介会社が求職者のスクリーニングや面接の調整を行うため、企業側は採用活動にかける手間と時間を削減することが可能となります。
<人材紹介サービスの欠点>
一方で、人材紹介サービスにはいくつかのデメリットも存在します。
まず1つ目のデメリットは、採用が成功した場合に支払う紹介料が「年収の約20%~30%」という高額な費用となることです。これは、企業の採用コストを大幅に増加させる可能性があります。
2つ目のデメリットは、求職者の登録数が少ない場合、限られた人材プールの中で他の企業と競争しなければならないという点です。これは特に、特定のスキルセットを持つ人材を求めている場合に問題となる可能性があります。
以上の点を考慮し、企業のニーズや状況に合わせて、人材紹介サービスの活用を検討することをおすすめします。確実な採用を目指すのであれば、人材紹介会社の活用は一つの有効な選択肢となるでしょう。
介護職における需要増
日本の高齢化社会が進行している中、介護職の需要について考えてみましょう。総務省が行った調査によれば、2010年時点で2948万人とされていた65歳以上の高齢者数は、2025年には3677万人にまで増加すると見込まれています。そしてその高齢者数は増え続け、2040年には最大のピークを迎えると予測され、その数は3921万人にまで達するとされています。
このように高齢者の比率が増大している現在、介護が必要となる人々の割合もまた増えていくことは想像に難くありません。それに伴い、介護職への人材需要も高まることは間違いありません。しかし、この需要が高まる一方で、介護職の人材獲得は依然として困難な状況が続いています。
そこで問題となるのが、なぜ介護職の採用が難しいのかという点です。この問題について、次の項目で詳しく見ていきましょう。
介護職員の採用困難な理由
介護職務の採用が難しい主要な3つの要因
給与の低さについて
「給与の低さ」は、人材問題の一つ目の要因として挙げられます。
介護福祉士の平均年収がどの年代でも全国平均年収を下回っているという事実です。需要が高まっているとはいえ、安定した収入を確保することが難しいとなると、介護福祉士として働く人材は増えにくくなります。これは、人材不足を深刻化させる一因となっています。
ネガティブな印象について
2つ目の要因は、一般的に「3K」と表現される、汚い・きつい・危険というイメージです。これは土木や建築の仕事、警備業界などでよく聞かれますが、実は介護職にも同じような認識が存在します。
「汚い」というイメージについてですが、介護職は被介護者の日常生活のサポートが主な業務となります。その中には、排泄介助や入浴介助といった、一般的なオフィスワーク等では経験することのない、特殊な業務が含まれます。そのため、そのような業務に対して抵抗感を持つ方が多いのが現状です。
「きつい」というイメージについては、介護職は体力勝負の部分も多々あります。被介護者の移動介助などは、体力を必要とするため、体調不良を引き起こしたり、腰痛などの職業病を抱える可能性があります。また、夜間のシフト勤務があるため、生活リズムが乱れやすく、その結果「きつい」イメージが強くなってしまいます。
そして、「危険」というイメージですが、介護職では被介護者の移動介助時に転倒するリスクがあります。これにより、自身だけでなく、被介護者にも大きなダメージを与えてしまう可能性があります。
そして、これら「3K」の上に、「給料の低さ」という4つ目の要素が加わり、これがネガティブなイメージを一層強めています。これらが組み合わさることで、介護業界の採用難という課題が生じています。
有給休暇の取得の難しさ
人材不足が問題となっている介護業界では、個々の従業員に対する業務の負担が大きいのが現状です。これは、有給休暇の取得を困難にしています。具体的には、自らが休暇を取ることで仕事の負担が同僚にかかると感じ、自身の休暇を後回しにしてしまう傾向があります。また、職場全体として有給休暇を取る環境が整っていない場合もあり、従業員自身が自由に時間を管理するのが難しい状況が見受けられます。
以上の3つの要因が重なり、人材の確保という観点からは難易度が高まっていると言われています。これらの問題を解消し、より良い労働環境を整えていくことが求められています。
介護職採用の前の準備事項
人手が足りないという問題を解決するためには、採用活動は避けられない挑戦です。採用が難しいというこの時代だからこそ、採用活動に取り組む前の事前準備が重要となります。ここでは、採用活動を始める前に必要な準備について詳しく説明します。
詳細な採用計画の策定
ビジネスの領域がどうあれ、新たな人材を迎え入れる前には、「採用計画」の策定が極めて重要なステップとなります。
この採用計画とは、具体的には以下のような要素を明らかにするものです。
1つ目は、「いつまでに」新たな人材を迎え入れるかという時期設定です。
2つ目は、「どんな人物」を求めているかという人物像の明確化です。
3つ目は、「どの部署で」その人材を活躍させるかという配置計画です。
そして4つ目は、「何人必要か」つまり求める人材の数を決めることです。
これらの要素を整理し、それに基づいて採用の基準や戦略、そしてスケジュールを計画することが、成功への道筋を描くためには不可欠です。これらの要素についてより詳細な内容を理解するためには、以下の記事を参照してみてください。
労働環境・福利厚生・待遇の向上
介護職の採用に困難を感じる一因として、待遇や福利厚生などの条件面が求職者に対して魅力が足りないという問題が挙げられます。 採用活動を開始しても、提供できる労働条件が求職者の期待とマッチしなければ、採用の成功は遠のくでしょう。
給与の引き上げだけでなく、福利厚生の充実や待遇改善も重要な課題です。求職者が「この施設で働きたい」と感じるには、働く環境全体を魅力的に整備することが不可欠です。これには、例えば、職場環境の改善や、キャリアアップの機会提供、教育・研修制度の充実などが考えられます。これらの取り組みを通じて、求職者にとって働きやすい、安心して働ける環境を提供することで、採用成功率の向上を目指すことが必要です。
職場環境の改善への取り組み
人材を確保するだけではなく、その人材を長期的に組織に留めることが企業にとって重要です。特に、職場の人間関係に起因する問題が原因で離職するケースは少なくありません。具体的には、業務に関する方針の違いから生じる従業員間の対立が一因となることが多いのです。
これらの状況が続くと、新たに採用した人材までが離職してしまう可能性があり、その結果、人材の採用に投じた時間やコストが無意味になってしまいます。
そこで、良好な人間関係を築くためには職場の雰囲気作りが重要となります。例えば、社内での懇親会を定期的に開催することで、従業員同士のコミュニケーションを促進し、互いの理解を深めることが可能となります。これにより、職場全体の雰囲気の改善につながり、組織の活性化や離職率の低下に寄与するでしょう。
したがって、採用における成功のためには、人材の採用だけでなく、その後の定着率を高める取り組みが不可欠です。職場の雰囲気を改善することで、従業員が働きやすい環境を作り、良好な人間関係を築くことが必要です。
介護職員採用成功の重要ポイント
応募が集まる求人募集のポイントを伝授
求人内容を魅力的にする手法
求職者は、彼らが検討する求人情報の詳細を巧みに比較し、彼らが応募するか否かの決定を下します。この場面で一番重要な要素は、「求職者の興味を引きつけること」ができるかどうかです。
もし、あなたの提供する給与や働く条件が他の企業と比較して劣っている場合でも、待遇以外の特長を強調することでその差を埋めることができます。また、求人募集を出す際には、どのような人物を採用したいのかを具体的に思い描くことが大切です。その人物像に対し、興味を持ちそうな要素を基にして、自社の魅力を伝えるポイントを明確に書き出すことが重要です。
なお、求職者の興味を引くような内容を思いつくのが難しい場合でも、最近入社した新入社員に対して「どの要素が自分の入社決定のきっかけとなったのか」や「どのような動機で仕事探しをしていたのか」を尋ねてみることをお勧めします。その回答を求人情報に反映させることで、より魅力的な求人内容を作り上げることが可能です。これは、求人情報を作成する際の一つの有効な手段となります。
多数の方々にPR方法を探求する
採用サイトがどれだけ優れた内容で、求職者の関心を引くものであったとしても、そのページが見られなければ全てが水の泡になってしまいます。
Indeedといった求人情報に特化した検索エンジンに採用サイトを登録することは、多くの閲覧者への効果的なPRに繋がります。企業の中には、さらにFacebookやTwitterといったSNSを活用して採用情報を広めているところもあります。特に若年層の人材を採用したいと考えている場合、SNSの活用は効果的な手段となり得ます。
写真の撮り方と見せ方の工夫法
企業の魅力を伝える際に、「写真」は非常に重要な役割を果たします。しかし、ただ単純に求人情報に写真を追加するだけでは十分ではありません。
最も肝心なことは、写真を通して「何を伝達したいのか」をはっきりと伝えることです。
たとえば、もし「社内の良好な雰囲気」が企業の特色であるなら、建物の外観や設備の写真だけでは、その魅力は十分に伝わらないでしょう。スタッフ同士が楽しそうに会話している姿や、クライアントとの快活なコミュニケーションの様子を写した写真など、求職者が職場の雰囲気を具体的に想像できる写真が必要となります。
新たに写真を撮影する必要があるかもしれませんが、それは応募数を増やすための効果的な手段なので、ぜひ試してみてください。ちなみに、クライアントの写真を撮る際は、肖像権などの問題を避けるために、事前に本人の許可を得てから掲載するようにしましょう。
採用プロセスのエンターテインメント化を意識する
一般的に、介護業界の職務について「困難さ」や「過酷さ」を想像する人々が多いという現状が存在します。これは、もちろん介護はハードな部分もあるものの、それと同時に多くの充実感や喜びをもたらす職業であるという点が、しばしば見落とされがちです。
そこで強調したいのが、"採用のエンターテインメント化"というコンセプトです。具体的には、採用過程で求職者に実際の職場を見学させる、あるいは仕事の一部を体験させるなど、仕事の楽しさや魅力を直接感じてもらうことです。
これは、ただ紙面上の求人情報だけからでは理解しきれない、仕事の魅力や楽しさを具体的に体験することで、求職者の応募意欲を引き立てる効果が期待できるからです。介護業界の仕事が「大変だけどやりがいがある」ことを実感し、理解するための新たな試みとも言えるでしょう。
介護職員の採用成功実例
この部分では、我々ネットオンが人材採用のお手伝いをした結果、介護職の人材を見事確保することができた事例についてご紹介します。
<問題点>
A社は自社で求人情報を出していましたが、「求職者との連絡が取れない」という課題に直面していました。これにより面接へ進む機会すら得られず、結果的に採用へ至らない状況が続いており、人材不足に頭を悩ませていました。
<支援の内容>
我々は細かい部分から手を加えることで、求人情報をより魅力的にするアドバイスを行いました。例えば、職種名の書き方についての提案などです。
さらに、「求職者との連絡が取れない」という問題を解決するため、ショートメッセージサービス(SMS)を活用したコミュニケーション方法を提案しました。
<結果>
求職者の数が増加し、より円滑なコミュニケーションが行えるようになりました。これにより、面接へとつながる道筋ができ、応募者7名のうち5名を採用できる月もありました。これにより、人材不足の問題も徐々に解消されつつあります。